◆本文
「やぁ、こっちだよ」

 

「時間がかかったみたいだけれど、大丈夫だったかい？　思ったより人が多くて大変だっただろう？　こんなことなら、おうちまで迎えに行けばよかったね」

 

「うん？　”デートかと思ったら緊張して準備に時間がかかっちゃった”って？」

 

「フフ。ボクのためにたくさん時間を使ってくれたんだね、とっても嬉しいよ、ありがとう」

 

「いつものキミもとってもステキだけれど、今日のキミは一段と可愛いね。すごく魅力的だよ」

 

「うん？　”そんなことない。アナタの方がいつも以上にステキ”って？」

 

「フフ。ありがとう。キミにステキって言ってもらえると、とても嬉しいよ」

 

「でも、どうしてボクがいつも以上に頑張って準備してきたか、分かってないみたいだね」

 

「どうしてかわかるかい？」

 

「キミに魅力的だと思ってほしいからだよ。キミのためだけに、がんばったんだ。喜んでくれるかい？」

 

「フフ。ところで、大丈夫かい？　お祭り会場はすごく人が多いみたいだけれど」

 

「うん？　”アナタが隣にいてくれたら大丈夫そう”って？」

 

「フフ。そんなに可愛いことを言われたら、離れるわけにはいかなくなっちゃったな」

 

「ほら、ボクの手を握って？」

 

「そうじゃないだろう？　いつもみたいに繋ぐんじゃなくって……ほら、ちゃんと指を絡めて、ギュッて握って、手のひらを合わせて？」

 

「そう。誰がどう見ても恋人に見えるように、しっかり繋いでおいておくれよ」

 

「今日のキミは魅力的すぎて、少しでも目を離したら、さらわれてしまいそうだからね」

 

「それじゃあボクたちも行こうか」

 

「花火、たのしみだね」

 

おしまい