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​●退屈なこの世界の片隅で

●作品概要

 18禁ゲームの会社さんへ応募するために作成したもの。

 ゲーム上の演出をタグとして入れて作ったものです。

◆エピソード1「プロローグ」

//bg町はずれの道_夜

【睦月】
「はぁ……飽きたなぁ~~~~……」

 町のパソコンショップからリヤカーを引くこと丸一日。
 俺はいい加減、飽きていた。
 
 がたがたとリヤカーの中で揺れるパソコン二台。
 修理から回収したばかりのそれは、緩衝材に包まれて居心地よさそうだ。

【睦月】
「いい加減車くらい買った方が良いと思うんだけどなぁ……いやでも維持費がなぁ……」

 この呟きも、何度したことか。
 
【睦月】
「はぁあ……」

 ふと、空を見上げると。

//bg満天の星空

【睦月】
「おぉぉ」

 相変わらず、いつかのテレビで見たような夜空が広がっていた。
 
 丸一日歩いたとはいえ、町の近くでもこんなに星が見られるとは。
 
【睦月】
「良い時代になったもんだなぁ」

 ちょっと気分が良くなった俺は、グッと力を入れ直して。
 
【睦月】
「どっこいしょういち、っと……!」

 もう一歩、踏み出すのだった。
 
 ………………………。
 
 ………………。
 
 ………。
 
//ブラックアウト

 大体、今から35年くらい前のことになる。
 
//bg町はずれの道_夜

 急遽、世界的研究機関を名乗る変な組織が電波ジャック的なことをした。
 ……らしい。

 俺も詳しくわからないのだが、
 とにかく急にわけのわからない放送と、
 わけのわからない現象が世界中で起こったらしい。
 
 俺はその放送を見なかったので、
 自分の身体に異変が起こったことに気付いたのは
 だいぶ後になってからだった。

【睦月】
「あ~~~~おぉ~~~~~ういぇーーーーー(音痴)」

 まず、老化しなくなった。
 今の俺の容姿は、35年前から何も変わっていない。
 
 そして、疲労しなくなった。
 丸一日、パソコンを乗せたリヤカーを引き続けているが
 なんともないのが証拠だ。
 
 疲れないだけでなく、
 食べることも、睡眠も必要なくなった。
 
 ついでに代謝?といわれるものもなくなったらしい。
 汗もかかなければ、垢もでない。
 
【睦月】
「さすがに慣れたもんだなぁ、この身体にも」

 そして、こうした変化は世界中で起こったらしく
 同時に、なんというか平和になったのだ。
 
 疲れず、何も必要でなく、身一つで何でもできてしまう。
 インフラの一切が必要なくなったのだ。
 世界中が「イェーイやったぜ!」という感じだったらしい。

 結果、当時一人暮らししていた俺は
 事態に気付いてすぐさま喜び勇んでぶらり旅に出た。
 
 そして、何日だったか何週間だったか。
 さまよい続けて、いい加減飽きたなという頃。
 
 そう、まさに今のような。
 ある日の真夜中。

//bg睦月と薫子の家_外観_夜

 あの家を見つけたのだった。

【睦月】
「やっと着いたかぁ……」

 今は、俺と同居人の……いいや。
 正確には、元々の持ち主の計らいで俺が居候させてもらっている。
 
//bg睦月と薫子の家_一階_夜

【睦月】
「たっだいまだぞ~……ん?」

 リヤカーを玄関先に置き、玄関から入ると
 すぐさま異変に気が付いた。
 
【睦月】
「なんだこれ……」

 足元で光る、小さな何かの破片を拾い上げてみると
 ガラスの破片だった。
 
【睦月】
「これ……二階の窓ガラスか……?」

 拾い上げた破片の周りには、同じような破片がいくつも散らばっていた。
 
 唐突に、嫌な予感に襲われる。
 
【睦月】
「ごくり……」

 どくん、どくん。
 心臓の鼓動が強くなる。
 
 ギシギシと軋む階段を、ゆっくりと上がる。
 
 そして、おそらくガラス片の出どころである
 二階にある同居人の書斎へと入ると。

【睦月】
「ッ!!!!」

//cg血まみれで倒れる董子の側に立つカーテンを羽織ったパオル

 散らばったガラス片、赤黒く染まった部屋。

 倒れているのが間違いなく同居人であり、
 その側に立つ銀髪褐色肌な女の子が、
 どうやら犯人らしいことがわかった。
 
 あまりにも非現実的な光景に心臓が早鐘を打つ。
 
 女の子は銀色の髪を揺らしながら、
 紫色の瞳でジッと同居人を見つめている。
 
 ローブのように身体に巻き付けているのは、うちのカーテンだ。
 それ以外、身に着けているモノはないらしい。
 
 窓から差し込む月明りに照らされて
 素肌と、若干見えてはいけないところが見えてしまいそうだ。
 
 どうすれば良いのか、何を考えれば良いのかが分からず
 立ち尽くしている俺へと、女の子が何かを突きつける。
 
 それは、ナイフといっても差し支えないほどの
 大きなガラス片だった。
 
【???】
「――悪く思うな」

 言葉と共に、女の子が両手でガラス片を構え
 突進してくる。
 
【同居人】
「やめ……ろ゛ッ……!」

 同居人の、かすれたような声が耳に届く。
 
 女の子の長い長い銀色の髪が吹雪のように広がって
 視界が埋め尽くされたと思った瞬間。
 
 ――ザクッ!
 
【睦月】
「痛ッっっってぇええええええええ!!!!!」

【???】
「!!!!!?」

 ざっくりと、大きなナイフの破片が俺のお腹に突き刺さったのだった。
 
 あぁ、マジ痛いったい……。
 
 ………………………。
 
 ………………。
 
 ………。
 
//ブラックアウト


◆エピソード2「死なない世の中」

//bg睦月と薫子の家_一階_夜

【血まみれの同居人】
「いやぁ、アッハッハ。まいったねぇ」

【睦月】
「まいったじゃねぇよ……ったくよぉ」

 血まみれなタンクトップ姿になりながら、
 自慢の伊達眼鏡をふきふきする同居人。
 
 くっそぅ、こいつめ。
 全然悪びれもしねぇ。

【褐色肌な女の子】
「ぅおいっ!!!何を呑気に話してやがるっ!!!」

【血まみれの同居人】
「だぁ~って、一生に一度あるかないかのシーンだったからつい」

【睦月】
「つい、で同居人が刺されるところを見ようとするんじゃねぇよ!めちゃくちゃ痛かったんだぞ!?」

【褐色肌の女の子】
「無視するなーーーッ!!!」

【同居人】
「あぁ、はいはいはいごめんねぇ。お姉ちゃんたち、ちょーっと大事な話があるから後でねぇ」

【褐色肌の女の子】
「自分たちのことを刺し殺そうとした侵入者について以外に大事な話があるものかーーーッ!!!」

 自分で言うんだ。

【涙目な褐色肌の女の子】
「ふぎぎ……馬鹿にしやがってぇ……!」

 ……若干涙目じゃないか。
 
【睦月】
「なぁ、いい加減相手してやっても……」

【同居人】
「おぉーそうだそうだ、PCはどうだった?無事直ったかな?」

【睦月】
「いや、あの」

【ぼろ泣きな褐色肌の女の子】
「ふぐっ、えぐっ」

【睦月】
「ほらあ!泣いちゃっただろ!!無視するなよッ!」

 あまりにも可哀想なので、
 女の子へハンカチを差し出しながら
 目線を合わせて話しかける。
 
【薫子】
「でっへっへ、つい♪」
 
【睦月】
「ごめんな、大丈夫か?俺で良ければ話聞くから、話してごらん?」

【マジギレな褐色肌の女の子】
「お前たちが私に聞く側だろうがッ!!!
 ぎゃっ!血まみれのハンカチなど使えるかアホーーーッ!!!」

 べちょっ。
 
 滴る血が顔面にべっとりついてしまった。
 意外と粘性あるんだよ?
 なかなか取れ無さそうだなぁ、コレ。

【睦月】
「あ、あぁ、ごめんごめん。えぇと、それでキミ、名前は?」

【パオル】
「……パオル」

【睦月】
「俺は天城睦月(あましろ むつき)。それでこっちは――」

【薫子】
「朝比奈薫子(あさひな かおるこ)どぇーすっ☆」

【睦月】
「……だ」

【パオル】
「チッ」

 うわあ、めちゃくちゃ嫌そうな顔。
 わかる、わかるぞ。

【睦月】
「薫子はこの家の家主で、俺は居候させてもらってるんだ。
 パオルは?どっから来たんだ?」

【パオル】
「……わからん」

【睦月】
「わからん?」

【パオル】
「……気付いたら、外に居た。
 それで、追われた。だから、ここに隠れようとしたら、
 そこの……そこの、やつが……」
 
【睦月】
「……オイ薫子。パオルに何したんだよ」

【薫子】
「べっつにぃ?ただちょーーっと服着てなくてセクシーだったから、
 そういう”売り子さん”なのかなーって思っただけだもーんっ」
 
 こ、ここ、こいつは、本当に……!
 脳みそがピンク色になってるんじゃないのか!?
 
【睦月】
「つまり何か、初対面の相手にか、か、か、身体の関係を
 迫ったのか?」
 
【薫子】
「どもりすぎだぞ~?童・貞・クンっ☆」

 うっ、うるさいやい!
 か、身体の関係とか言いなれなくて当然だろ!?
 
【睦月】
「あぁ、もう……悪いな、パオル」
 
【パオル】
「構わん。そこのメガネ女が相当おかしいということはわかったからな」

 うわぁ、心底嫌そうな顔。
 
【薫子】
「でへへ」

【睦月】
「お前は睨まれて嬉しそうにするな!」

【パオル】
「それではこちらからもひとつ聞かせてもらおう
 お前たちはなんなんだ、人間じゃないのか
 なぜあれだけ出血して死なない」
 
【睦月】
「あー……」

 パオルの問いかけに、思わず薫子と顔を見合わせてしまう。
 
 こんなことを聞かれたのは、ずいぶん久しぶりだからなぁ。

【パオル】
「そこの女に至っては苦しんでたかと思ったら
 急にけろっとした顔で起き上がったぞ!
 あいつはなんなんだ!」

 パオルの警戒対象は基本的に薫子らしい。

【薫子】
「にっしっし……!」

 ……楽しそうだなぁ、こいつは。
 
【睦月】
「あぁ、じゃあとりあえず――」

【薫子】
「ぅおーーっと!何をあたしを差し置いて説明し始めようとしているのかなぁ?
 童貞クン!!
 説明はあたしの役目でせう!?」
 
【睦月】
「あぁ、そう……じゃあ、好きにしてくれ」

 俺は水浴びに行きたいしな、タオルでも探すか。
 どこにしまったかなぁ。
 
【薫子】
「にっしっし!
 さぁ、おじょうちゅわぁ~ん♪
 お姉さんが手取り足取り舌取り、ねっちょり教えてあげりゅからねぇ」
 
【パオル】
「ちっ、ちち、近づくなぁ!!!」

【薫子】
「あたしたちはねぇ、だいたいぃ、
 35年前にねぇ、身体が内側からぜぇーんぶ変わっちゃったのぉ」
 
【パオル】
「ひぃ、ひぃぃっっ!
 触るなぁ!近づくなあ!!」
 
【睦月】
「薫子……ちゃんと説明してやれ」

【薫子】
「ぶぇーい……せっかく若い身体に触れると思ったのに……ぶつぶつ……」

【パオル】
「ふぇ……こわかった……」

【睦月】
「………」

 薫子もたいがい訳が分からないが、
 この子も結構訳が分からないな。
 
 弱気なのか強気なのか、よくわからん。
 この家に入ってきたのも、相当思い切った行動だったのかもしれない。
 
【薫子】
「で、だ。
 あたしたちがどうして刺されても死なないのかというと、
 もうあたしたちは人間じゃないから、っていうのが答えになるのかな」
 
【パオル】
「人間じゃ、ないだと?」

【薫子】
「そ。正確には”もうこの世に人類は居ない”って言った方が正しいかなぁ」

【パオル】
「ど、どういうことだ」

【薫子】
「遡ること35年前。
 突然世界中のネットワークに接続された機器全てがハックされたの」
 
【薫子】
「そして音声や文字列で『生まれ変わるけど良いよね?OK?』みたいな、
 謎のメッセージが現れた直後に”世界中から苦悩が無くなった”の」
 
【パオル】
「???……???????」

 薫子の説明がざっくりすぎて、褐色肌の女の子は首がもげるんじゃないかってくらいに首をかしげている。

【睦月】
「実際のところ、俺たちも良く分かってないんだよ」

【パオル】
「そう、なのか?」

【睦月】
「あまりに突然のことで、メッセージも数秒しか表示されなかったらしい。
 実際、俺はそのメッセージを見てないしな」

【パオル】
「そうなのか……で、本当に”生まれ変わった”ということか?」

【薫子】
「そゆこと~♪でもその方法も、どう生まれ変わったのかもわかってない。
 ろくな研究者が居ないのか、研究成果がこっちまで広まってこないのか知らないけど、
 実態は解明されきってないんだよねぇ」
 
【薫子】
「少なくとも、あたしたちは死なず、年を取らず、痛みを感じず、
 およそマイナスと取れる感覚を失い、
 およそプラスと言える感覚のみが残った別の生き物になったのさ!」
 
【パオル】
「で、では、私は、一体」

【薫子】
「ふぅむ……パオルちゃんも、あたしたちと同じだとは思うけどねぇ」

【睦月】
「そうなのか?」

 言われても、パッと見で分かるものじゃないからなぁ。
 まさかナイフで刺してみるわけにもいかないし……。
 
【薫子】
「いっぺん刺してみよっかっ!」

【睦月】
「ダメだろ!!!万が一違ったらどうするんだ!」

【薫子】
「だって『気がついたら外に居』て、『誰かに追われて』ここまできたんでしょ?
 それに最近の出来事を知らないみたいだし」
 
【睦月】
「あぁ……だから?」

【薫子】
「十中八九あたしたちとは違うだろうし、刺してみたいじゃない?」

【パオル】
「ふぇえぇ……っ」

【睦月】
「お前ホントにいい加減にしろよ……」

 冗談のつもりだろうけどめちゃくちゃ怯えられてるからな!?

【薫子】
「まぁまぁ、それは冗談としてもだ。
 手、見せてごらん」

【パオル】
「手……?
 あっ」

 女の子が手を広げると、ガラス片を握った時についたであろう傷は、
 もうほとんどふさがっていた。
 
【薫子】
「と、いうわけ♪
 つまり、パオルちゃんも気付かないうちにあたしたちと同じように、
 人ならざるお体になられていたわけだ」
 
【パオル】
「私が……人じゃ、ない……」

【薫子】
「まぁ、かといって。
 どうして追われていたのかーってことはわからないんだけれども、
 何か心当たりは?ないのかい?」

【パオル】
「……あったら、言ってる」

【薫子】
「ふんむ……そりゃそっか。
 でも、少なくとも35年前――あたしたちが変わるよりも以前のことは知ってる、
 だよね?」
 
【パオル】
「あ、あぁ」

【薫子】
「ふぅむ……ってことは35年もの間世間と隔絶された場所に……?
 黙示録を仕掛けた犯人と何か関係が……?
 それともまだ変化の起こっていない地域が存在する……?」
 
【パオル】
「あ、お、おい?」

【薫子】
「ぶつぶつ……ぶつぶつ……」

【睦月】
「あぁ、薫子は職業柄、考え始めると何も聞こえなくなるんだ。
 悪いな」
 
【パオル】
「い、いや、それはいいんだが……そうだ、あの、お前は大丈夫なのか?
 だいぶ、痛かったみたいだが……」
 
【睦月】
「俺は薫子と違って痛覚は残ってるんだ。
 あいつに言わせると錯覚らしいんだけどな、
 実際のところはよくわからんけど…とりあえず別になんともない」
 
 刺した本人から心配されるというのもおかしな状況だ。
 
【薫子】
「新しいネタになるかもしれない……パソコン、パソ、
 睦月ぃ!!あたしのパソコンはぁ!?」
 
【睦月】
「いきなりデカい声を出すなよ!
 表のリヤカーに置きっぱなしだよ、今持ってく――」
 
【薫子】
「あーーー待って待って待って!!!」

 ――グイッ。
 
【睦月】
「ちょ、な、なんだよ」

【薫子】
「パオルちゃんを裏の川にでも連れてって、身体洗うフリしてさ、
 なんか聞いてきてよ」
 
【睦月】
「な、なんかってなんだよ」

【薫子】
「何者なのかーとか、誰に追われてたのかーとか、
 どこから来たのかーとか、何か覚えてることはーとか!
 あと性感帯!!!」
 
【睦月】
「せ、性っ!?」

【薫子】
「なんでもいいから聞き出すの!
 それで、ぜーーーっっったい逃がしちゃだめだからね!?
 良い!?」
 
【睦月】
「わ、わかった、わかったって」

【薫子】
「……よろしい。
 じゃ、パオルちゅわぁ~ん♪お姉ちゃんと一緒に裸のお付き合いしよっかぁ♪」
 
【パオル】
「なっ!お、おお、お断りだっ!!!!」

【薫子】
「ちぇ~っ、じゃあ睦月。
 川にでも連れて行って、身体洗ってきてくださぁい。
 おうちの中が血だらけになっちゃいまぁす」
 
【睦月】
「お、おう」

【薫子】
「はい、パオルちゃんの着替え♪」

【パオル】
「ぐ、ぬぬ……い、要らな――」

【睦月】
「あ、睦月ー?
 パオルちゃんは睦月の使用済みが良いんだってー!
 今着てるやつ着させてあげ――」
 
【パオル】
「わ、わわわわかった!着る!貰う!」

【薫子】
「はい、どーぞっ♪」

【パオル】
「くそぅ……」

【睦月】
「……まぁ、なんだ。
 行くか」
 
【パオル】
「う、うむ」

【薫子】
「ごゆっくりーっ♪」

 そんなわけで、俺とパオルは玄関を出たのだった。
 
//ブラックアウト

//bg小川_夜

 家の近くの茂みを抜けると川がある。
 足首ほどまでしか深さのない、とても浅くてちっちゃい小川だ。
 
【睦月】
「くぅ……いてて」

 じゃばじゃばと血まみれになった身体を冷たい水につける。
 
 傷口はほとんどふさがっているので、大したことはないのだが。
 どうにもジンジンとした痛みが残っている。
 
【パオル】
「あー……オイ」

【睦月】
「ん?」
 
【パオル】
「その、なんだ……」

【睦月】
「ん?なんだよ」

【パオル】
「わ、悪かった、な」

 パオルは心底バツが悪そうな口調で謝った。
 
【睦月】
「……そうやって、バツの悪そうな謝罪をするやつも
 久しぶりに見たよ」
 
【パオル】
「……???」

【睦月】
「まぁ、さっき言ってた変化のせいでさ。
 およそ本気で謝るっていうことがさ、無くなったんだよ。あの時以来。
 どいつもこいつも気楽になったもんでさ」
 
【パオル】
「そう、なのか」

【睦月】
「……パオルは?
 なんだか色んな事情を知らないみたいだけど、
 いままで何して――って、そっか」
 
 気付いたら外に居た、だっけか。
 
【パオル】
「気がついたら、外にいた。
 ここと同じような、人里離れたどこかだった。
 誰も居ない、な」
 
【睦月】
「なるほどなぁ」

 寂し気な目で、すこしうつむく女の子。
 薫子の話を抜きにしても、この子を放っておくのは、なんか。
 あまり気分がよろしくない気がする。

【睦月】
「なぁ、えぇと、パオル?」

【パオル】
「ん、なんだ」

【睦月】
「うち、住むか?」

【パオル】
「……は?」

【睦月】
「事情を知らないみたいだし、いろいろ大変そうだし、
 これも何かの縁だろ?
 気持ちの整理がつくまででも、何かわかるまででもいいしさ」
 
【パオル】
「……私が何をしたか、もう忘れたのか?」

【睦月】
「俺も薫子も、まぁ他のひとたちもだけど……
 あんくらい、どうってことないんだよ。
 それよりも、なんも知らない女の子を一人で追い出すほうが心配だ」

 俺の言葉を聞くと、パオルは少し考えてから。
 今度はさっきとは違って、バツが悪そうだけど、
 なんだかモジモジしながら言った。

【パオル】
「そういう、ことなら、
 しばらく、匿ってもらいたい、の、だが」

【睦月】
「よっし、そうと決まれば薫子に確認しないとな」

【パオル】
「あ、お、おい!どこへ行くんだ!」

【睦月】
「薫子に確認するんだよ!」

 俺は、いまだ取れ切れていない血まみれの身体で家へと戻った。

//ブラックアウト

//bg睦月と薫子の家_外観_夜

 ……の、だが。

【睦月】
「……なんだこりゃ」
 
 玄関の前には荷物の詰め込まれたリュックサックと、
 
【薫子】
『知り合いのお風呂屋さんに新作届けてきてね♪
 ついでにパオルちゃんとイイコトしてきてよぉ~?
 あとであたしがインタビューするんだから!』

【薫子】
『ま、あのお子様体形じゃあ童貞クンのおちんちんは反応しないだろうけど(大爆笑)
 PS,パソコンはセッティングしておくから!お疲れ様~♪
 ご褒美が欲しかったらちゃ~んとおねだりしてねん☆』

 という、ふざけた書置きがおいてあった。
 
【睦月】
「あのやろう……!」

 丸一日かけて歩いた俺に、また丸一日歩いてこいっていうのか!?
 いや、疲れはないからいいんだけどね?
 
 同じ道をもう一度歩くことに対するめんどくさいという感情まで消え去ったわけじゃないんだよ!

【パオル】
「あ、お、お、おい、待っ」

 ぴょこぴょこと茂みを掻き分けながら出てくるパオル。

【睦月】
「……閉め出された」

【パオル】
「は?
 ……なんだ、その荷物は」

【睦月】
「あぁ、薫子からの嬉しい嬉しいプレゼントだよ」

【パオル】
「???」

【睦月】
「あぁ……ちなみに確認だが、体調のほうはどうなんだ?
 いろいろ事情を知らないようだし、寝たり食ったり……必要か?」
 
 俺も全ての人間に食事や睡眠が必要か聞いて回ったわけではない。
 俺の場合、『痛みを感じる』という他人との違いがあるため、
 こうして相手に了解を得るのが普通になのだ。
 
 決して万が一を恐れているドチキン野郎というわけじゃないからな!
 違うんだからね!

【パオル】
「……いいや、なんともないな」

【睦月】
「そういうことなら……そうだな……、
 風呂、行くか」

【パオル】
「風呂?確認は、良いのか?」

【睦月】
「パオルも一緒に行って来い、だそうだ。
 あいつも一応認めてるんじゃないか、一緒に行って来いってことらしいし」
 
【パオル】
「………だが」

【睦月】
「あー……まぁ、なんだ、俺は飽きっぽいんだ。
 これからまた一人で歩き続けるのは退屈なんだよ。
 だから、パオルみたいな子が一緒に来てくれるっていうなら大歓迎だ」
 
【パオル】
「おまえ……」

【睦月】
「とりあえず、町までのお使いに付き合ってもらえると助かる
 どうだ?」

【パオル】
「だが、だが……私は、お前を刺し殺そうとしたんだぞ?」

【睦月】
「パオルは世間に疎いらしいからな、改めて言っておくぞ」

【パオル】
「う、うむ」

【睦月】
「今の世の中、人殺しくらいじゃ誰も騒がないんだよ」

//ブラックアウト

//bg町はずれの道_夜

 リュックサックを背負って、すぐのこと。
 
 俺と、薫子の渡したらしい白いワンピースに着替えたパオルは、てくてくと月と星の明かりしか無い夜道を歩いていた。

【睦月】
「また、ここを歩くことになるとはなぁ。
 しかも三十分も止まらないで……はぁ……」
 
 疲れはしなくたって、飽きくらい来る。
 
 家で多少はゆっくりしたかったなぁ。
 
【パオル】
「な、なぁ」

【睦月】
「ん?」

【パオル】
「その、やっぱり多少疲れはするのか?」

 おずおず、といった様子でパオルが話しかけてくる。
 
 やっぱりまだ気をつかってるのかなぁ。
 まぁ、そりゃあそうか。
 
 いきなり馴染めというのも無理な話だ。
 なんでか知らないけど、世間の事情を知らないらしいし。
 
 ま、それもおいおい聞いて行けばいいか。
 先は長いんだから。

【睦月】
「いや、疲れじゃないんだ。
 なんていうか『家でゆっくり本読みたかったなぁ』みたいな?
 それだけだよ」
 
【パオル】
「そ、そうか」

【睦月】
「パオルのほうは?
 なんともないのか?」
 
【パオル】
「あ、あぁ、なんともない。
 こんな風じゃなかった気がするが……うぅむ……」
 
【パオル】
「自分でもよくわからん」

【睦月】
「はは、俺も最初はそうだったよ」

 いきなり疲れがなくなったーとかなんとか言われても、
 意識がごっそり入れ替わったわけじゃない。
 
 慣れるまで結構な時間がかかったものだった。

【睦月】
「俺みたいに痛みを感じるっていう人は稀らしくてさぁ
 余計に受け止め方に迷ったもんだったよ」
 
【パオル】
「そ、そうなのか」

【睦月】
「痛いけどなんともないぞーなんて言われたって、
 こっちは痛いんだぜ?
 『痛い!』って思った時点でなんともないってことはないってな」
 
【パオル】
「っ……その、す、すまなかったな……。
 私も、その……何がどうなっているのか、わからなくて……。
 だから……気が動転していて……」
 
 ……どうやら、変に気を使わせてしまったらしい。
 そういう意味じゃなかったんだけどな……そうだ。
 
【睦月】
「なぁ、パオル」

【パオル】
「えっ、なっ、なんだ」

【睦月】
「俺の名前、呼んでみ」

【パオル】
「え、はっ?」

【睦月】
「俺の名前。もしかしてもう忘れたか?」

【パオル】
「あ、い、いや!そんなことないぞ!
 ええと、む、つき?」
 
【睦月】
「はい、もう一回」

【パオル】
「むつき………」

【睦月】
「はい、もう一度!」

【パオル】
「む、睦月っ!」

【睦月】
「はい、もっと元気に!!」

【パオル】
「む、睦月ーっ!!」

【睦月】
「はい、もっといやらしく!!!」

【パオル】
「む、むつきぃっ!!!
 ………って何やらせんだっ!」
 
 ――ドゴォッ!!
 
【睦月】
「ぅごっふぇ!!
 ごほっ……な、名前、覚えたか?
 げほっ、ごほっ、ぅおえっ……」
 
【パオル】
「……あぁ、もう覚えたぞ睦月。
 それがなんだっ」

【睦月】
「あぁ、薫子がさ。初めて出会った時教えてくれた儀式だよ。
 俺と、お前――パオルが、家族になる儀式だ」
 
【パオル】
「家族になる、儀式?」

【睦月】
「俺も……いや、事情を知らないから、まぁ違うかもしれないけど、
 俺もパオルと似たようなもんだったんだよ」
 
【睦月】
「適当に歩き回って、どこだかわかんなくなって、そのうち携帯も使えなくなって、
 結局たどり着いたころにはわけわかんなくなっててさ……そん時に、ふたつ。
 おまじないを教えてもらったんだ」

【パオル】
「その一つ目が、これか?」

【睦月】
「そうとも」

【パオル】
「じゃあ、二つ目は?」

【睦月】
「『まぁいっか、って唱えろ!』だってさ」

【パオル】
「はぁぁ????」

【睦月】
「俺は、ほら。薫子ほど顔も広くないし、いろんな事情がわかんないけどさ、
 まぁ、たいていのことは俺に関係ないし。くよくよする必要はないから、
 『まぁいっか』って唱えろってさ」
 
【パオル】
「なんだ、その適当理論は……思考放棄してるだけじゃないか」

【睦月】
「まぁ、それで十分ってことなんだとさ。
 ほら、先は長いことだしさ。
 町までも、これから先も」
 
【パオル】
「……」

【睦月】
「とりあえずは、何日も一緒に過ごすことになりそうだ、
 気楽にいこうぜ?パオル」

【パオル】
「……あぁ、そうしよう。
 よろしく頼むぞ、睦月」
 
【睦月】
「へへっ、そうこなくっちゃな」

 やっと笑ってくれたパオルに一安心して、歩を進めると
 トトトッとパオルが並び歩いてくる。
 
 案外、なんとかなりそうだ。
 
 そうして俺は、もう一度力強く踏み出すのだった。

【パオル】
「あぁ、そうだ。睦月」

【睦月】
「ん?なんだ、パオル」

【パオル】
「胸をちらちら覗こうとするのはいいが、もう少しバレないようにしてくれ」

【睦月】
「ぶっふぉぉっっ!!!」

 ………………………。
 
 ………………。
 
 ………。
 
//bg満天の星空

 かくして、俺は同居人の頼みでパソコンを回収し、
 一日かけて帰宅したと思ったら殺人鬼(?)の女の子に遭遇。
 
 なんやかんやで同居することとなり、同時に。
 再び来た道をまた一日かけて歩くこととなったのだった。
 
 再び見上げた星空は相変わらずキレイな星空だったが、今はそれだけではない。
 
 隣を歩く小さな家族の存在に、胸が高鳴り、わくわくしている。
 
 この退屈で平和な世界が、また少し面白くなる予感がしているのだった。
 
 ……ところでパオルは下着、つけてんのかな。

 ………………………。
 
 ………………。
 
 ………。

//ブラックアウト


===≪この退屈で平和な世界の片隅で≫===


◆エピソード3「現代のお風呂屋さん」

//bg町はずれの道_昼

【パオル】
「――では、薫子は小説家なのか!?」

【睦月】
「あぁ、そうだぜ?
 あれでも結構有名人なんだよ、あいつ。
 俺はその手伝いってところ」
 
 すっかり夜が明けた頃。
 
 未だに町へ着かない俺とパオルは俺たちの仕事についておはなし中だった。

【睦月】
「これから行く風呂屋も、薫子の新作が欲しいっていうんで何度も届けにいったことがある店なんだ」

【パオル】
「まさかあの変態タンクトップにそんな才能があるとはな……!
 やはり、世も末か?」

【睦月】
「はは、ひでえ言いぐさ。
 けどまぁ、間違っちゃいないかもなぁ」
 
 町の様相を見れば、間違いなく世も末だと思うことだろう。
 まさしく世紀末といった具合だからなぁ。

【睦月】
「今じゃあ、物々交換が基本だからな」

【パオル】
「そうなのか……?
 そこまで文明が退化しているとは……」
 
【睦月】
「あー、まぁ。そう言えなくもない、のか?」

【パオル】
「これから行く風呂屋も、その新作とやらを代金にして利用するのか?」

【睦月】
「あ、あぁ、そう、だな」

【パオル】
「……なんだ、歯切れの悪い」

【睦月】
「あ、あぁ!いやぁ!あの、ほら、言ったろ?
 汗かかないからさ、マトモに使ったことないんだよ。
 だから若干緊張するなぁ~っていう、な?」
 
【パオル】
「ほぉん……?」

 くっ、めちゃくちゃ疑ってやがる!
 
 いや、しかし、どうする……!
 
 ”風呂屋”にこれから行くんだぞ!?
 俺と、パオルの二人で!
 
 ここで、画面の前のキミには説明しておこう。
 
 現代において風呂屋が必要な場面というのは大変すくない。
 上下水道がほぼ必要ない現状、水というのはどんなものでも大抵使えるのだ。
 
 身体や手を洗いたい~などといったときにはそのへんの川でも十分というわけだ。
 
 結果、風呂屋はどういう場所になっているか。
 
 公共の場でせ、せ、せせ、セックスを、するための場所になっているのだ……!!!
 
 常識的に考えれば現代のイロハを知らないパオルに対して、
 事前に詳細を教えてやるべきだろう。

【パオル】
「睦月……?」

 いやしかし!詳細を教えてしまえば風呂屋に入ることを拒否するかもしれない!
 
 いくら俺とはいえ、やはり間近で女子の生着替え、生裸が見れるかもしれないこのチャンス!逃したくはない……!!
 
 薫子としてはパオルと”イイコト”をしてきてほしいらしいが……それはまた別の話だ。
 見れるだけでいいの。
 
 ……まぁ、いいか!!!

【睦月】
「あっ、ほっ、ほら!見えてきたぞ!」

 ここまで来たら、どうにでもなれだ!!!

【パオル】
「あ、お、おい!急に走るな!
 おーーーいっ!!!」

 ………………………。
 
 ………………。
 
 ………。

//bg駅前_昼

【睦月】
「ほら、ここが町だ」

【パオル】
「……なんだ、ずいぶんとぼろぼろというか……」

【睦月】
「苔だらけ、って感じか?」

【パオル】
「うむ……しかし普通に人は歩いておるな」

【睦月】
「まぁ、町だしな」

【パオル】
「カルチャーショックだ……」

【睦月】
「はは、まぁ、なんだ
 ……これからもっとデカいカルチャーショックを受けるさ」
 
【パオル】
「んん?今なんか言ったか?」

【睦月】
「い、いやいや!?
 ほら、早く行くぞ!」
 
 ………………………。
 
 ………………。
 
 ………

//bgお風呂屋さん_外観_昼

 駅前から少し歩いたところ。
 そこに目的のお風呂屋さんがある。

【睦月】
「ここだ、ここ」

【パオル】
「ほぉ……ずいぶんとボロボロだな」

【睦月】
「まぁ、外観はな。
 入ってみれば結構印象違うと思うぜ」

【パオル】
「うむ……」

【睦月】
「ん?どうかしたのか」

 ――きょろきょろ、きょろきょろ。

【パオル】
「いいや……追っ手は、居ないかと思ってな」

【睦月】
「あぁ、追われてきたんだもんな……。
 しかし、昨日は町でもウチでも別に変なのは居なかったと思うがなぁ」
 
【パオル】
「まぁ、巻いてきたからなっ」

【睦月】
「どっちだよ……」

【パオル】
「……私も自分のテンションがわからん。
 タンクトップ女に当てられたのかもしれん」
 
【睦月】
「あー、それはしょうがないな。
 俺もあいつと会ってからだいぶ適当になった自覚がある」

【パオル】
「奴はなんだ、病気かなんかなのか」

【睦月】
「当たらずとも遠からずってところかもしれないな。
 作ってるもの的にも」
 
【パオル】
「奴の小説が人気というのだから、本当に信じられん。
 おもしろいのか?」
 
【睦月】
「うぅむ……おもし、ろいといえば、そう、かも?」

【パオル】
「……なぜ疑問形なんだ」

【睦月】
「い、いやぁ、それは、その。
 ちょっとこの辺を読んでみればわかるさ」
 
【パオル】
「どれどれ……」

 ――ぺらり、ぺらり。
 
【パオル】
「ふむふむ………――っ!?」

【睦月】
「あー……」

【パオル】
「なっ、ななな、なんだこれは!
 こっ、こんなっ、へ、へへ、変態めっ!!!
 変態どもめっ!!!!」
 
【睦月】
「い、いやいや!?俺は関係ない!俺は関係ないからな!?」

 いや!確かに内容に関しては一通り目は通してるけども!?

【パオル】
「まま、まさか、この小説のネタにするため私にあんなことやこんなことをするつもり――っ!?」

【睦月】
「そ、そんなことないって!まじで!」

 少なくとも俺はね!
 俺は、ね!!!
 
【睦月】
「今の時代、娯楽というとそういう読み物みたいなものが普通なんだよ。
 どこかへ遠出したり、芸術に触れたりっていうのがさ。
 んで、中でもそういう、その、なんだ、官能小説っていうのも人気ってわけ」
 
【パオル】
「そう、なのか?」

【睦月】
「食い物やらスポーツやらも、まぁ……無いわけじゃないけど、
 好きで作る人たちしか居ないし、流通ライン?が前ほど整ってないからな。
 手軽に、気軽にってわけにはいかないんだ」
 
【睦月】
「だからこういう本みたいに、広めたい~っていう意思のある人のモノっていうのが一般的なんだ。
 特にえ、えろいのは、需要があるからな」

【パオル】
「そういうものなのか……」

【睦月】
「そうなんだとよ。
 薫子の話くらいしか知らないから、ホントかどうか怪しいけどな。
 ほら、行くぞ」
 
【パオル】
「カルチャーショックだ……その2……」

 ………………………。
 
 ………………。
 
 ………

//ブラックアウト

//bgお風呂屋さん_受付

【パオル】
「お、おぉ」

【睦月】
「結構キレイなところだろ?」

【パオル】
「あぁ。町なかとは大違いだな」

【睦月】
「オーナーさんがキレイ好きなんだよ」

【オーナー】
「あら、もしかして朝比奈センセのお手伝いくん?」

【睦月】
「どうも、新作届けに来ました
 あと……一応、お風呂を」

【オーナー】
「あらっ、ありがとう♪
 あらあらあらっ?
 ということはそちらの可愛らしいお嬢さんとごにょごにょ……なのかしらっ」

【パオル】
「ん?」

【睦月】
「ええと、まぁ、はい」

【オーナー】
「まぁ♪お手伝いくんも隅に置けないわねぇ、このこのぅっ」

【睦月】
「い、いや、普通に汚れたからですよ、ホントに」

【オーナー】
「えぇ~?朝比奈センセはそういうつもりじゃないんじゃないのぉ~?」

【睦月】
「うぐ……するどいですね」

【オーナー】
「ふふっ♪伊達にセンセの小説読んでないもの♪
 そちらのお嬢さんのお名前は、なんていうのかしら」

【パオル】
「パオルという」

【オーナー】
「そう、じゃあパオルちゃんとお手伝いくんにはサービスを――」

【パオル】
「……なぁ、睦月。あれはなんだ」

【睦月】
「ん?」

 パオルの指さした先。
 40代くらいの男性と若い女性が二人、店に入ってきているところだった。
 
【いかにもな男性】
「ぐっへっへ、でけぇ声出すなよ?」

【怯える女性】
「ひっ……!」

 後ろ手に両腕を掴まれている女性は怯えたような……フリをしている。
 そう、フリ。あくまで演技だ。
 
 しかし、パオルにはそんな演技には見えなかったようで。
 
【パオル】
「おい!そこのおっさん!」

【いかにもな男性】
「あぁん?なんだぁ、このチビはよぉ??」

【睦月】
「ばっ、馬鹿やろう!」

 咄嗟にパオルの腕を引き寄せようとしたが、バッと勢いよく振り払われてしまう。
 そして、ズンズンと男性に向かってにじり寄っていくパオル。
 
【パオル】
「その手を離せ!嫌がっているだろうっ!」

【いかにもな男性】
「おいおい、お嬢ちゃん。あんまりイケナイお店に来ちゃぁ、ダメだぜぇ?」

【パオル】
「はぁ?イケナイお店だと?風呂屋のどこがイケナイお店だ!
 お前のような輩こそ、来る場所を考えたらどうだ!」

【睦月】
「おいおいおい、ちょっと、ちょっと待てって」

【パオル】
「止めるなよ睦月、この世が如何に変わったとてこういう輩は決して居なくならないのが世の常らしい。
 力づくでもその手を離してもらうぞ!」
 
【怯える男性】
「ひぇっ」

【睦月】
「だから待てってば!違うんだよ!
 この人たちは”そういう演技してる人たち”なのっ!!!」
 
【パオル】
「……はぁ?」

 あぁもう!どうして俺がこんなこと言わなくちゃいけないんだよ!
 
【睦月】
「いいか、パオル。家でも説明したけど、世の中変わったんだよ。
 今じゃあ無理やりそういうことをしようなんて考える人は居ないんだ、
 身体の仕組みと同じように心の仕組みも変わってだな――」
 
【パオル】
「何をふざけたことを……現にこうして!嫌がる彼女に破廉恥な行為を強制しようと……ん?」

【気まずそうな女性】
「あ、そのぉ……えと……彼には、私が頼んで、その……」

【パオル】
「えっ……」

【気まずそうな男性】
「あ、あぁ、ええと、違うんだよ?俺と彼女は、その、一応付き合ってて、ね?」

【パオル】
「そう、なのか?だって、さっきまで」

【気まずそうな女性】
「だ、だから、私が……その、無理やり犯されるプレイがしたいのって言って……」

【パオル】
「おっ、おかっ!?」

【気まずそうな男性】
「だから人目の少ないところのほうが良いんじゃないかって言ったんだよ、ホント、あの、そっちのキミもごめんね?
 変なもの見せちゃったみたいで……」
 
【睦月】
「いえ……こちらこそ本当にお邪魔してしまって申し訳ない……。
 あ、これ良かったらウチの新作なんですけど、お詫びということで」
 
【気まずそうな男性】
「あ、どうも……」

【嬉しそうな女性】
「やだっ!これって朝比奈先生の新作ですかっ!?」

【睦月】
「えぇ」

【嬉しそうな女性】
「やったぁ……!わ、私、先生の大ファンなんです!
 あの、あの、新作絶対これからも応援してます!」
 
【睦月】
「ありがとうございます、薫子にも伝えておきますよ」

【男性】
「これが朝比奈先生の……早速帰って読まないとだな!
 すみません、それじゃあ我々はこの辺で」
 
【パオル】
「お、おう」

 ぺこりと頭を下げた男女は、そのままそそくさと出て行った。
 
【睦月】
「……パオル」

【パオル】
「……あい」

【睦月】
「……今度からは、ひとこと俺に相談してくれ」

【パオル】
「………ぁい」

【オーナー】
「ぷくくっ」

 大変気まずくて恥ずかしい思いをした俺たちを、オーナーさんが独りカウンターの向こう側で爆笑しているのだった。
 
 くっそぅ、こんなことになるならちゃんと教えておけばよかった。
 
 ………………………。
 
 ………………。
 
 ………。

//ブラックアウト

//bgお風呂屋さん_大浴場_昼

【パオル】
「なっ、なぁっ!なんなんだこれは!」

 ひとしきりオーナーさんに笑われたあと、そのまま大浴場へ~と言われた俺たちは
 二人そろって大浴場へと足を踏み入れていた。

【睦月】
「あー……」

 大浴場では、そこらじゅうでカップルがせ、せせ、セックスしてたり愛撫しあっていたり。
 
 嬌声とぬっちぬっち音が反響しまくっている。
 
【睦月】
「ま、まぁ、とりあえず座れよ」

 せめてもの気づかいで、すみっこの席へと座るように促す。

【パオル】
「な、な、なんなんだここは!どいつもこいつも頭がおかしいのか!?」

 パオルが顔を真っ赤にしながら、小声で聞いてくる。

【睦月】
「違う違う、そういう場所なんだよ。……俺も初めて中に入ったけど」

 というか近い。そんなに近づくな、触っちゃうだろ!?
 
【パオル】
「そういう場所、だと?」

【睦月】
「お前も知っての通り、俺たちはもう怪我だのなんだのしなくなった。
 同時に、汗だの垢だのも無くなったって言っただろ?
 だから風呂場なんて利用するのは、俺たちにみたいに汚れた~っていうやつか……」

【喘ぐ女性】
「あぁっ、はぁっ、はぁっ、いくっ、いくぅっ……!ひぃいうっっ……!!!」

【睦月】
「……………ごくり」

【パオル】
「ぅおい」

【睦月】
「あ、あぁ!つまり!ああいうことを公の場でしたがる連中の来る場所ってことだ」

 いいや、本当は普通の温泉施設というのもあるのだが。
 
 ここのオーナーが薫子のファンだからという理由なのだ。
 
 ……まぁ、俺はといえば本を届けるばかりで入ったのはコレが初めてなのだが。

【パオル】
「一体どうなってるんだ……意味がわからん……!」

【睦月】
「…………な、なあ」

【パオル】
「……なんだ」

【睦月】
「おそ、そ、そおそ、そんなにぃ↑興味が、あるっていうなら、あ、あ、あ、あ、あ、相手してやらんこともないぞ」

【パオル】
「ハァ?」

 ひぃっ!めっちゃ睨まれたっ!
 
【睦月】
「い、いや、チガウンスヨ……薫子に言われただけでですね……」

【パオル】
「はぁ……??」

【睦月】
「アイツの小説をよ、読みましたでしょう?
 だから、そのネタになるんじゃないかーってことでお前にいやらしいことをして来いと……、
 あとでインタビューするからと……言われ、まし、た」

【パオル】
「アホか……」

【睦月】
「『まぁ、あのお子様体形じゃあ睦月の童貞おちんちんですら勃たないだろうけどぉ?キャハハ!』とも言ってたな」

【パオル】
「(カチンッ)」

【睦月】
「ま、まぁ!さっさと身体洗ってさっさと帰――」

【パオル】
「……いいだろう」

【睦月】
「へ?」

【パオル】
「相手してやるって言ったんだ!」

 ――バサァッ!
 
//cgお風呂で全裸のパオル

【睦月】
「な、なぁっ」

 唐突に衣服を脱ぎ去ったパオルの裸体に俺の視線は釘づけになっていた。
 
 褐色肌に、わずかなふくらみの胸。
 ツンと小さく立った淡いピンク色の乳首。
 
 つるつるのお腹に、キレイなへそ。
 そして腰回りから下半身にかけて白く白人のような肌にグラデーションしている不思議な肌色。
 
 何より、な、な、な、何より。
 初めて間近で見る本物のおまんこ。
 
 ぷっくりと膨らんだ、男のそことは全然違って柔らかそうなおまんこ。
 産毛も生えていないそこに、思わず生唾を飲んでしまう。
 
【睦月】
「お、おま、なんて恰好してるんだよ」

【パオル】
「なんだ、ここはそういう場所なんだろう!?
 お前も早く、脱げっ、このっ」
 
【睦月】
「や、ちょ、ら、らめぇ!」

 強引にズボンをはぎ取られる。
 
 そして、露わになるちょっぴり興奮気味な俺の息子。
 
【パオル】
「……な、なな、なんだその、モノは」

【睦月】
「い、いやぁ、前々から気になってたお風呂屋さんに入れた喜びと緊張と、
 初めての間近な女体に緊張気味といいますかなんといいますか、
 緊張って二回言ったね、俺……」
 
【パオル】
「……~~っっ!これはっ!
 その、り、臨戦態勢なのかっ!?」
 
【睦月】
「ちっ、ちち、違いますっ!もっと戦闘力は上がりますっ!」

【パオル】
「ど、どうすれば上がるんだっ!!」

【睦月】
「そ、れは、あ、あぁ、洗いっこ、とか?」

【パオル】
「あ、洗いっこ、か……よ、よし」

 ぷしゅぷしゅっ、と。
 パオルはボディソープを自分の手に出すと。

【パオル】
「い、いくぞ」

【睦月】
「え、え?いくの?」

【パオル】
「あ、当たり前だ!ふんぬっ!」

 ――びちょっ。
 
【睦月】
「ふおっっっ」

 ぱ、パオルの小さくてふにふにな手が、
 ボディソープでぬるぬるになった手が俺の息子を掴んでいる。
 
 くぅ……触れられているだけなのにグングンと息子に血液が集中していってしまう……!
 
 女の子の手ってどうしてこんなに柔らかいんだ……!!!
 
【パオル】
「ど、どうした、洗いっこなのだろう、む、睦月も早くしろ」

【睦月】
「あ、お、おう」

 息子を掴まれたまま、俺もぴゅっぴゅとボディソープを手に出して。
 
【睦月】
「ごくり……え、えい」

 ――ぷにょんっ。

 や、やわっ!!
 
 物凄くやわらかいっ!!!
 
 女の子の性器は二の腕だったか脇腹だったかと同じ柔らかさとか聞いたことがあるけど、
 そんなものではないっ!!!
 
 ぷにぷにのふわふわで、信じられないほど心地よい感触だ。
 
 永遠にふにふにともてあそんでいたくなるほど。
 
【パオル】
「ひゃうっ!」

 中の粘膜になっている部分に触れたとき、パオルがびっくりしたような声を出す。

【睦月】
「あ、す、すまん、痛かったか?」

 お、女の子のそこはデリケートって言うしな。
 
 ちょっと触り方が乱暴だったかもしれん。

【パオル】
「~~~~っ!!! き、聞くなっ!」

 キッ!と真っ赤な顔で睨み付けられ、思わず『なんだよそんなに顔真っ赤にして~』
 などと軽口を叩こうと思ったけど絶対俺の顔も真っ赤なのでやめた。

【パオル】
「で、さ、触ってるだけなのかっ!?」

【睦月】
「あ、え、い、いや、あ、洗うけど」

【パオル】
「だったらさっさとしろっ!!」

【睦月】
「しっ、知らないからなっ!!?」

 意を決して割れ目を指先でなぞりあげてみる。
 
 すると、少しざらついたような、指先に張り付くようなぷにぷにの内側に触れた。
 
【パオル】
「んひぅっっ、く、くすぐったっ、あぅっ」

【睦月】
「だ、大丈夫か?」

 手を止めて問いかけると。
 
【パオル】
「い、いちいち聞くなっ!あほっ!ばかっ!」

 涙目で怒られてしまった。

 こ、こっちだって痛い思いさせないか不安なんだよ!
 
 くっ、し、知らないからな!?ホントに知らないからなっ!
 
【パオル】
「ひぅうっ、あっ、うぅぅっっ、そんなゆっくりなでるなぁっっ」

 今度はパオルの言葉を無視して、おまんこの入り口を確かめるようににゅるにゅると指を滑らせる。

【パオル】
「んっ、く……うぅっ……なでられてる……だいじなとこたしかめるみたいにぃ……!」

 ふにふにの割れ目のお腹側の端っこに、こりこりとした小さな何かを発見する。

【パオル】
「んひぅっっ、なっ、なにいまのお……っ」

 こ、これが、ぞ、俗にいう、クリトリスかっ!?
 
 あ、あのひんひん言うやつだっ!すごく気持ちいいと噂のところだっ!
 
 興味津々でクリトリスらしきところをきゅっと指の腹で押してみると、パオルはぶるるっと腰を震わせて。
 
【パオル】
「んうっっ、―――っっっ!!」

 声を出さないように口をきゅっと固く結ばせた。
 
 や、やっぱり気持ちいいんだろうか?
 
 気持ちよいならば、とこりこりとクリトリスを指の腹で小刻みに刺激する。
 
【パオル】
「っっ、~~~~っっ!!、―――っっ」

 声こそあげないものの、パオルの腰はカクッカクッと時折前後に揺れて。
 指から逃げようとするので、片方の手で腰を抑えて入念に刺激する。

【パオル】
「んんっっ、ふぅっ、ひゃ………んんーーっ、んふぅっ、はうっ……んんーーーっっ」

 こりこりとした感覚が心地よいだけでなく、気持ちよさそうに眉をゆがめるパオルの表情が最高にいやらしい。
 
 もっと感じて欲しくて、指の速度を上げてみる。
 
【パオル】
「はあっっ、あっ、ぁあっ、だめっ、だめだっ、んうぅっ、すごっ、あっぁっ、ひぃうっっっ」

 押し殺した声で、パオルが上擦った声で限界を知らせてくる。
 
 カクカクと揺れていた腰も一層大きくビクンッと引かれて、これまでにないくらいの反応を見せた。

【睦月】
「あ、い、イった、のか?」

【パオル】
「ふぇっ……」

 あまりに必死な様子だったので思わず手を止めると、
 パオルは一瞬あっけに取られた様子でぽかん、とした表情を浮かべる。

【パオル】
「な、なんで……っ」

【睦月】
「え、いや、なんか、辛そうだったから……え、まだ?」

【パオル】
「こンのっ、っっ~~~~!!!」

【睦月】
「あ、ご、ごめん、ごめんてっ!!」

 鬼の形相で睨まれたので慌てて愛撫を再開すると、すぐさま気持ちよさそうな表情に戻っていく。
 
【パオル】
「んうぅっ、んっ、~~~~っっ」

 くにゅくにゅとクリトリスへの愛撫をつづけていると、
 徐々に足の力が抜けてきているのかぷるぷると下半身が震えはじめる。
 
【パオル】
「はあっ、はぁぅっ、あぁっ、はっ、はあっ、はあっっ」

 やがて荒い息と共に押し殺した声が漏れ始める。
 ……が、どこかもどかしそうにくちゅくちゅと音を立てるそこへと視線を落とすパオル。
 
【パオル】
「んんっ、んうぅっ、んんんっっ」

 喘ぎ声を出したくないのか、視線だけで何かを訴えかけられる。
 え、も、もっと激しくするの?大丈夫?
 
 多少不安になりながらも、人刺し指だけで刺激していたところを
 二本指でさっきよりも激しくこすりあげる。
 
【パオル】
「ふにゃぁあっ、あぁっ、すごっ、ふいぃぅうっ、あぁっ、しゅごいよおっ」

 全身をぶるぶると震わせながら、パオルは嬌声をあげる。

【パオル】
「んんーーっ、んーーーっっ、んうっ、はあっ、はあぁっ、ひうぅっっ」

 それでもこらえ気味だった声も、だんだんと我慢しなくなっていき。
 
【パオル】
「あーーーっ、ひゃあっ、そこぉっっ、んうーーっ、にゃうぅうっ」

 だらしなく開いた口元からは気持ちよさそうな嬌声が漏れ出すようになっていた。
 
 そ、そんなに良いんだろうか。
 ……ごくりっ。

【パオル】
「はーーっ、あーーーっっ、んうぅっ、うーーーっっ……!!!」

【睦月】
「な、なぁ、パオル」

【パオル】
「ひゃ、はぁ、はぁっ、えっ?」

 手を緩めて、さっきから掴まれたままのガチガチに勃起した息子を強調させる。
 
【睦月】
「俺も、その、いいか」

【パオル】
「っ、ぁ、あぁ」

 パオルの気持ちよさそうな姿を見ているだけで先走り汁が漏れ出すほどに興奮していたそこは、
 愛撫のせいで指先の動きがままならないパオルの扱きでも敏感に反応した。
 
【睦月】
「くぅっ、す、すごいきもちいっっ」

 ふにふにの手が息子を包み込んでごしごし、くちゅくちゅと刺激してくる。
 痴態を眺めるばかりで焦らされていた息子は亀頭の裏っかわをトントンと叩かれるたびに、びくっびくっと震える。

【パオル】
「ほ、ほんとかっ、はぁっ、はあっ、わ、私もっ、すごくっ、ひうぅっっ」

 快感に流されないように、指先に力を込めてさっきまでと同じ速度で愛撫を再開する。
 
 二本の指でクリトリスを押しつぶしながら左右に震わせてこりこりと刺激する。

【パオル】
「くひぅうっっ、そこっ、あぁあぁっ、しゅごっ、ひううぅうっっ」

 ボディソープと愛液でとろとろになったそこの熱で指先が溶けそうだった。

【パオル】
「こりこりしゅごいぃっ……んっ、んうぅうっ、あぁああぁ……っっ」

 時折、息子への快感で視界が白く飛びながらも愛撫を続けていると。

【パオル】
「い、イキそうか、んうぅうっ、もうっ、イキそうかっ?」

【睦月】
「あ、あぁ」

【パオル】
「わっ、私もっっ、ひうぅうっ、だっ、だからっ」

 お互いに限界が近いことを確認すると、ラストスパートと言わんばかりに手が早まる。
 
 やがて、
 
【パオル】
「はぁあっっ、もうっ、だめっ、だめっっ、いくっ、イクっっ、―――っっっ!!!」

【睦月】
「く、おぉっ」

 ――びくっ、びくびくっっ!!!
 パオルのそこがぷぴゅっと大量の愛液を吐き出すのと同時に、俺の息子が射精する。

【パオル】
「ふやあぁあぁぁあぁ、ひいぃっ、ふぁぁっ、あっあぁっ、すごっっ、んひぃうぅうっっっ」

【睦月】
「くうぅ……!!!」

 これまでないくらいの量を吐き出す息子に、
 放心状態になりながら。
 
 俺は、やっちまったと後悔していたのだった。
 
 ………………………。
 
 ………………。
 
 ………。

//ブラックアウト
 
//bgお風呂屋さん_受付

【オーナー】
「はい♪サービスのコーヒー牛乳♪」

【パオル】
「う、うむ」

【睦月】
「ど、どうも」

 結局、お風呂で互いに、その、しあったのち。
 
 他のお客たちがヤリまくる大浴場では落ち着いて話もできないので、
 俺とパオルは着替えを済ませて受付へと戻ってきていた。
 
【睦月】
「……と、とりあえず、座るか」

【パオル】
「う、うむ」

 しどろもどろになりながらも、ラウンジの隅っこにある椅子に腰かける。
 
 な、なんだ、こういう時って、何を話したらいいんだ。
 
 気まずい感情と空気しか流れてこない中、思わず口をついて出た言葉は。
 
【睦月】
「その、ホントによかった、のか」

 とてつもなく弱気なひとことだった。
 が、パオルのほうも冷静ではなかったようで。
 
【パオル】
「あ、あぁ、その、気持ち、よかったしな」

 と、聞いてないのに恥ずかしい報告をしてくれた。
 
【睦月】
「そ、そっか」
 
 よ、よかったぁ~~~!!!
 
 俺だけが勝手に舞い上がってるとか、
 パオルが感じてる風の演技をしているとか、
 そういうのじゃなかった~~~~!!!
 
 だってよく聞いてたから!
 演技する~とか勝手に男のほうが満足して終わるパターン~とか!
 
【パオル】
「あー、その、睦月は、どう、なんだ」

【睦月】
「えぇっ!?お、俺は、その、
 あ、あんなに出たことないくらい、良かった、です」
 
【パオル】
「そ、そうかっ」

 う、うぅう、嬉しそうにしないでくれえ!
 
 期待しちゃうだろ!?次を期待しちゃうだろお!!?

【パオル】
「そっ、その、こういう知識はあったが、なんだ、
 したことなかったから、な、うん、
 ……………く、クセになりそうだ」
 
【睦月】
「えっ、じゃあ一人でしたこともないのか」

【パオル】
「きっ、記憶には、ないなっ」

 ま、まじかよ。
 
 俺はパオルという一人の女の子を初イキさせてしまったのか。
 
 感動のあまり涙が出てきそうだった。
 
 今日まで童貞で良かったッ……!!!!
 いや、まだ童貞だけど。
 
 こ、これはやはり責任をとらないと?
 い、いやでも、本番まではいっていないしまだセーフなのでは!?
 
【パオル】
「そ、その、だな。
 睦月さえよければ、だが」
 
【睦月】
「お、おう、なんだ」

【パオル】
「また……い、いい、いや、なんでもないっ!」

【睦月】
「お、お、お、おう」

 誤魔化すようにコーヒー牛乳の蓋をぱこっと開けて、グッと瓶をあおるパオル。
 
【パオル】
「んっ!? 美味いっ!!!
 睦月、なんだこれは!どうしてこんなに美味いんだっ!」

【睦月】
「あ、あぁ、オーナーさんの特製らしいぞ。
 ここの風呂屋さんが人気なのも、このコーヒー牛乳飲みたさで~
 っていうお客さんも多いらしい」

【パオル】
「そうか……また、来る機会はあるんだろう?」

【睦月】
「まぁ、そうだな。薫子の新作が出来次第、来ることになるだろうな」

【パオル】
「じゃあ……その時は、私もまた連れてこいよ」

【睦月】
「え?でも……」

 また今日みたいなことになるかもしれないのに?
 
【パオル】
「い、いいなっ!わかったなっ!」

【睦月】
「お、おう」

【パオル】
「……ところで、睦月。もしかして、なのだが」

【睦月】
「ん?」

【パオル】
「その、一般的なのか?
 こういう場所で、その、する、というのは」
 
【睦月】
「あ、あぁ、そうだな。
 かなり一般的だな」
 
【パオル】
「そうなのか……カルチャーショックその3だ……。
 しかし、その、なんだ。わからんでもない」
 
【睦月】
「食い物も作る人が少なくなったからな、
 食えば美味いし、欲しがる人も居なくはないんだが
 『無くちゃ死ぬ!』っていうことがなくなったからな」
 
【睦月】
「自分の身ひとつ……というか、身体さえあれば出来ること、
 っていうのが一般的な娯楽、らしいぞ」
 
【パオル】
「ほほぉん、なのに睦月はこれまでそういう経験がないのか」

【睦月】
「そっ、そういうのは、その、大切な人とするものだって決めてんだよっ!
 ……あと、チャンスがなかっただけで……ごにょごにょ」

【パオル】
「まぁ、どうでもいいが」

【睦月】
「聞いたなら興味持って!ちょっとは興味もって!!」

【パオル】
「それで、これからどうするんだ?」

【睦月】
「あ、あぁ……とりあえず、帰るか。
 オーナーさんに新作は渡したしな」

【パオル】
「では、いくか」

【睦月】
「お、おう。おう?」

【パオル】
「ふんふんふ~んっ♪」

//bgお風呂屋さん_外観_昼

 こうして、コーヒー牛乳を飲んだおかげか。
 なんだか妙に上機嫌なパオルと共に、俺は帰路についたのだった。
 
 正直、あんなことがあったのにこれといって動じていない様子なのは女子だからなのか?
 意識しているのは俺だけなのか?
 わからん……女の子わからん……!
 
 ………………………。
 
 ………………。
 
 ………。

//ブラックアウト

◆エピソード4「38年前」

//bg睦月と薫子の家_外観_昼

 家に着いたとき。

//bg睦月と薫子の家_一階_昼

 どうやらスランプらしく手が止まっていた薫子は、
 俺たちを見つけると飛び起きてきて。
 
【薫子】
「何かわかったっ!!?」

 と詰め寄ってきたものの。
 すっかり風呂での一件のせいで”パオルから何か聞き出す”という目的を忘れていたことを伝えると、
 
【薫子】
「ま、まじか……!!!」

 落胆するかと思ったら、嬉々としてパオルを自分の書斎へと引きずっていったのだった。
 
 事細かに聞かれてるんだろうなぁ。
 
【睦月】
「……ま、いいか」

 もともとイイコトをしたらパオルにインタビューすると言っていたしな。
 
 それを踏まえたうえで行為に踏み切った俺が完全に悪い。
 
 それに薫子の作品を待っている人は大勢いるんだ。
 
 お風呂屋さんのオーナーさんだってそう、お客さんだってそう。

【睦月】
「俺のつたない経験ひとつで薫子の筆が進むというのなら、それは大いに喜ぶべきなんだ……うん……」

【睦月】
「とりあえず、寝ておくか」

 無理やり自分を納得させながら、俺はソファに横になり目を閉じた。

//ブラックアウト

 こんな身体になってからも、余裕が出来たら一度こうして眠るようにしている。
 
 そうしないとなんだか一区切りつかない気がするのだ。

 目を閉じて、じっとしているうちにだんだんまどろんでいるような気がしてくる。
 そして、徐々に意識が沈んでいく……。

 ………………………。
 
 ………………。
 
 ………。
 
//bg火の海

【女性】
「睦月っ!貴方は逃げてっ!」

 母の声が響く。
 
 同時に、父が母をかばうように抱きしめる。
 
 そして、一瞬のうちに。
 
 二人は”何か”に丸呑みにされて、目の前から消えてしまった。
 
 跡形もなく。
 
 ………………………。
 
 ………………。
 
 ………。

【パオル】
「睦月?」

//bg睦月と薫子の家_一階_夜

【睦月】
「ん、んん……ぱおる……?」

【パオル】
「寝ていたのか。
 この体でも、眠れるんだな」
 
【睦月】
「あぁ……そう、だな……ふあぁ。
 薫子の話は?終わったのか?」
 
【パオル】
「あ、あぁ、良いのが書けそうだとか言って部屋に籠ったぞ。
 それより、うなされていたみたいだぞ?大丈夫か?」
 
【睦月】
「ん?んー……そう、だな。
 暇なら、話しておくか。
 俺の身の上話で、まぁ……大した話じゃないけどな」

【パオル】
「あぁ、聞きたい」

【睦月】
「今から、たぶん38年前くらいかな。
 宇宙人がやってきたんだ」
 
【パオル】
「う、ちゅうじん?」

【睦月】
「SF小説の話じゃないぞ、急にやってきたんだ。
 そいつらは、どろどろの塊で、デカい口がついてて、
 人をかたっぱしから丸呑みにしていった」
 
【パオル】
「……突拍子もない話だな」

【睦月】
「話してるこっちだってそう思うよ。
 で、まぁ俺の両親も餌食になって、
 その夢を見てたってだけの話だよ」
 
【パオル】
「それは、その……なんというか、変なことを聞いて、すまん」

【睦月】
「いいんだって、今更どうこう思っちゃいないよ。
 両親は俺を守って……居なくなったけど、死体もないし。
 案外、宇宙人と仲良くやってるんじゃないかって思ってるよ」
 
【パオル】
「その、宇宙人とやらは、今は?」

【睦月】
「あらかた人を丸呑みしたら空に帰ってった、ってことしか知らないな。
 二度と見てないって話だし、なにより探す気もないしな」
 
【パオル】
「そう、なのか?本当に?」

【睦月】
「ホントだって。
 親だって、咄嗟のこととはいえ好きでやったことなんだ、
 後悔してないだろうしさ。ならいいかーって思ってる」

【パオル】
「そう、か……じゃあ、それからずっと睦月はひとりで……?」

【睦月】
「まぁ、案外すぐにこういう身体になって、薫子に出会ったからな。
 ひとりでずっとさびしく過ごしてた~なんてことはないよ」

【パオル】
「……なら、いいんだが」

【睦月】
「じゃ、交換条件ってことでパオルのことを聞かせてほしいなぁ」

【パオル】
「わっ、私は、相変わらず何もないぞ?」

【睦月】
「ほんとかぁ?」

【パオル】
「せ、せいぜい、その……風呂が気持ちよかったくらいしか……」

【睦月】
「………」

【パオル】
「……(もじもじ)」

【パオル】
「そ、そうだ!
 薫子はああして物書きをしているのはわかったが、睦月は何をしているんだ?
 手伝えることがあれば、なんでも手伝うぞ!」
 
【睦月】
「ふぅむ、そうだなぁ。
 俺もいつもは薫子の手伝いだから、薫子の原稿が進まないことにはやることがなぁ……」

【パオル】
「そ、そうなのか?
 では、手の空いた時はなにを?」

【睦月】
「基本的に本読んでるな。
 あとは必要なものを集めに町にいったり……日曜大工的な?」
 
【パオル】
「て、的な?」

【睦月】
「……こういう時に日にちの感覚が曖昧だといつ何をしているか思い出せなくて困るな」

【パオル】
「痴呆が始まってるんじゃなかろうな」

【睦月】
「んなことはないぞぅ!
 時々情報収集のために町の病院とか行くが、そんな話は聞いたことがない!」

【パオル】
「ほう、現代でも病院はあるのか」

【睦月】
「基本的にナースさんにお世話してもらうプレイが流行ってるだけだがな」

【パオル】
「どこもかしこもそんなのばっかりか……」

【睦月】
「まぁ、基本的にはその日思いついたことをやってるって感じだ
 とりあえず今日のところは……そうだなぁ……滝でも見に行ってみるか」

【パオル】
「滝?あの小川の上流か?」

【睦月】
「あぁ、結構気持ちいんだぜ」

【パオル】
「水浴びか……!いいなっ!行こう!」

【睦月】
「おっし、じゃあいくか!」

 ………………………。
 
 ………………。
 
 ………。

 そんな感じで、この日から俺とパオルは何だかんだと二人で行動するようになった。

//bg小川_昼

 この日は滝へ行って、二人で潜水。

//bg水中

【パオル】
「ごぶぉぶぉ、ごぼぼぼ!
 (水の中でも、平気なんだな!)」
 
【睦月】
「ごぼぼびぼぼ、ごぶぼぼごぼぼ
 (当たり前だろ、空気も必要ないからな)」

【パオル】
「……ごぶぉぶぉ
 (何言ってるかわからん)」
 
【睦月】
「……ごぶぉ
 (ですよねー)」

//ブラックアウト

//bg駅前_昼

 またあるときは自転車を作るためにパーツ集め。
 
【睦月】
「フレームさえ見つかればなぁ……」

【パオル】
「あ、あったぞ!あったぞ睦月!」

【睦月】
「まじでか!?」

【お風呂屋さんで見た男性】
「ウチに何か御用で……あっ」

【パオル】
「えっ」

【睦月】
「あっ」

//ブラックアウト

//bg町はずれの道_昼

 またまたあるときは完成した自転車に二人で跨って、ラジオの電波探し。

【睦月】
「なんか聞こえるかぁ~?」

【パオル】
「もう少し……もう少しで何か聞こえそうなんだ……!
 むっ!?そこを左だっ!」

【睦月】
「よしきたっ!
 ……って、おぉわっ!?」
 
【パオル】
「田んぼに突っ込めとは言っておらーんっ!!」

//ブラックアウト

//睦月と薫子の家_一階_昼

 またまたまたあるときは、家でのんびり読書。

【パオル】
「睦月ー、何読んでるんじゃー」

【睦月】
「ジャマイカのの教科書ー」

【パオル】
「しょーかいしょーかい」

【睦月】
「……いつまでやるんだ、このしりとり」

【パオル】
「陸が無くなるまで」

【睦月】
「こえぇよ!?」

//ブラックアウト

//bg睦月と薫子の家_睦月の部屋_夜

 そして、夜には必ず二人そろって同じベッドで眠るようになっていた。
 
【パオル】
「すぅ……すぅ……」

 隣でパオルが眠っていると、もう昔の夢を見ることはなくなっていた。
 
【睦月】
「なんだかんだで、助けられてるんだな」

【パオル】
「んぅ、んん……!」

【睦月】
「ん?」

 そして、俺がうなされることが無くなった代わりなのか。
 時折、パオルはうなされることがある。
 
【パオル】
「わ、たしは……しらな……うぅ……!」

【睦月】
「パオル、パオル」

【パオル】
「はっ……!」

 ――ガバッ、ゴチンッ!
 
【睦月】
「いっっっつ!!!」

【パオル】
「お、おぉ、すまん」

【睦月】
「いてて……また、うなされてたぞ?
 大丈夫か?」

【パオル】
「あ、あぁ……」

 ギュっとシーツを握るパオルの指先は、かすかにふるえている。
 
【睦月】
「……どんな、夢なんだ?
 聞かせてくれよ、話せば少しは楽になるかもしれない」
 
【パオル】
「……睦月」

【睦月】
「こないだのおかえしと……いつもの、おかえしってことでさ」

【パオル】
「……あぁ、ありがとう」

 弱弱しくも微笑んだパオルは、ゆっくりと話し始めた。
 
【パオル】
「声が、聞こえるんだ」

【睦月】
「声?」

【パオル】
「知らない人の、でも、懐かしい声が聞こえて、
 なんて言ってるのかわかんないけど、でも、それを聞かなきゃいけないような気がして」

【パオル】
「だんだん、鮮明に聞こえてくるんだ。
 私は、何か、思い出さなきゃいけないことがあるような、気がしてっ」
 
【睦月】
「そっ、か」

 ここ数日。
 一緒に過ごしていたけれど、パオルの過去のことは何もわかっていない。
 
 どこかから逃げ出してきたらしい、パオル。
 
 なにか思い出したくないようなことがあるのかもしれない。
 俺の、あの夢のように。
 
【睦月】
「何か、俺に出来ることがあれば、なんでもいってくれ」

【パオル】
「……むつき」

 ここで普通だったら問答無用で抱きしめたりするのだろうけども、俺にはそんな余裕も甲斐性もなかった。

【睦月】
「パオルが来てから、その、毎日楽しいんだ。
 夢も、この間以来見てないし、
 毎日毎日助かってるし、その、なんだ」

 ただただ、何かしてあげたいという意思を言葉にするので精いっぱいだった。

【睦月】
「あぁ時々くだらないこともしてるけど、
 その、なんていうか、俺なりに感謝してるんだ、
 だから、その、力になりたくて」

【パオル】
「じゃあ……その」

 そっと、パオルの指先が俺の指先に当たる。

【睦月】
「は、はいっ」

 緊張で心臓が飛び出そうになる。
 
【パオル】
「キス、してくれ」

【睦月】
「あ、ぅ、お」

 潤んだ瞳で見つめてくるパオルの言葉が、どんな意味を持つのか。
 
 少なくとも、興味本位の言葉じゃないことくらい、俺にもわかった。

【パオル】
「だめ、か?」

【睦月】
「い、いや、そんなことないぞ」

 お互いの心の中に、お互いを置いておく。
 
 お互いの心の中に、お互いの居場所を作る。
 
 パオルの求めることが、きっとそういうことで。
 
 キスは、その証なんだとわかった。
 
【睦月】
「っ……」

 パオルの小さな肩に、両手を置いて。
 ゆっくりと顔を近づける。
 
 間近に迫る銀色の髪。

 まっすぐ俺を見つめる、紫色の瞳。
 
 夜の明かりに照らされながら、少しだけ赤くなった頬。
 
 小さな小さな唇に、そっと。
 
 口づけをした。

【パオル】
「ん……っ」

【睦月】
「ん、ん……」

 ほんの一瞬。
 
 一秒にも満たない、キスだったけれど。
 
【パオル】
「……ありがとう、睦月」

 パオルの気持ちには、ちゃんと答えられたみたいだった。
 
 そして、安心した様子でパオルは寝そべると。
 
 きゅっと俺の手を握りながら、眠りについたのだった。
 
 ………………………。
 
 ………………。
 
 ………。

//ブラックアウト

◆エピソード5「現代のネカフェ」

//睦月と薫子の家_一階_昼

 そんな感じで日々を過ごしていたある日。
 
 部屋にこもりっぱなしだった薫子がようやく出てきた。
 
【薫子】
「お゛、わ゛っだぁあぁあぁ~~~~……がっくし」

【睦月】
「おう、お疲れ」

【薫子】
「もう何もしたくない……もういやだ……あぁあぁあ~~~~」

【パオル】
「ほれ、代えのタンクトップをやろう」

【薫子】
「うぅうぅ……ありがとうパオルちゃん……あたしはもうだめだぁ……、
 骨は、海に、撒いて……がくっ」

【睦月】
「よし、それじゃあデータを印刷所に――」

【薫子】
「あ、それはちょっタンマ」

【睦月】
「ん、まだ修正するのか?」

【薫子】
「今度のやつは大々的に売り出したいから、町にいってネットでイベント調べてきて!
 それまで修正したいから、印刷所へのアポはそのあとでよろしくぅ!」
 
【睦月】
「イベントかぁ」

【パオル】
「イベント?なんだ、なんのイベントだ?」

【睦月】
「時々薫子みたいな作家集めて即売会やるんだよ。
 町でも何度かやってるから、そこで直接手渡しして~っていうな」
 
【パオル】
「ほほ~う」

【薫子】
「そういうタイミングだと印刷屋さんもビシッと気合い入れてくれるからねぇ
 いっぱい量をさばけるんだよぉ」
 
【睦月】
「紙作りだって手間と時間がかかってるからなぁ……」

【薫子】
「ってなわけで、今回もこないだの新作を”例のネカフェ”に届けてきてねんっ♪」

【睦月】
「おまっ、あそこに行かなくたって」

【薫子】
「えぇ~?だってぇ、今回はぁ、パオルちゃんが居るしぃ」

【睦月】
「そうは……言っても、だな……」

【パオル】
「???」

【睦月】
「うっ」

【薫子】
「とーにーかーく、よろしくねっ♪」

【睦月】
「りょ、りょうかい」

 そんなわけで、再び町へ向かうことになった。
 
//ブラックアウト

//bg町はずれの道_昼

【パオル】
「なぁ、睦月」

【睦月】
「ん、な、なんだ?」

 自転車に二人で跨り、町へと向かう途中。
 
 パオルは興味津々な様子で問いかけてきた。
 
【パオル】
「や、やっぱり、そのぅ……”例のネカフェ”というのは、やはり、”あの風呂屋”と同じような店なのか?」

【睦月】
「いやぁ、まぁ、当たらずとも遠からず、みたいな?」

【パオル】
「そっ、そうなのか……じゃあ、また……」

【睦月】
「い、いや、こないだみたいなことにはならない、かなぁ……?」

【パオル】
「……フッ、そう照れなくても良いぞ?
 私だってもう慣れた、そうかたくなに隠す必要はない」
 
【睦月】
「いや、ホントに今度のところはそういうんじゃなくって」

【パオル】
「ほんとーに睦月は童貞じゃのぅ」

【睦月】
「関係ねぇだろ!?」

【パオル】
「ふふふっ♪」

 くっそぉ、調子に乗りやがって……。
 
【パオル】
「また、睦月と………♪」

 しかしまぁ、良いか。
 
 上機嫌でいてくれた方が、こっちとしても助かる。
 
 ……あまり、気乗りはしないといえばそうなのだが。
 
 ”例のネカフェ”では、パオルに頑張ってもらう必要があるからなぁ……。
 
//ブラックアウト

//bgネカフェ_外観

【睦月】
「ふぅ、やっぱり自転車があると段違いに早いな」

 疲れないからどこまでもスピードを上げたまま走れるしな。
 
 うぅむ、こんなことならもっと早く導入しておけばよかったかもしれん。
 
【パオル】
「ここが、ネカフェ……なのか?
 相変わらず苔だらけだが」

【睦月】
「あぁ。パソコンと、ネット回線が完備されてる……って、まぁ当たり前と思うかもしれんが、
 今じゃあネットにつながってるっていうのは貴重なんだよ」
 
【パオル】
「そうなのか?あー……整備がなんとか、というやつか」

【睦月】
「そ。好きで整備だなんだ~ってする人は前に比べたらグンと減ったらしいからな。
 こういう場所は結構多いけど、それでも家庭に必ず回線を~とはいかないのが現状だ」

【パオル】
「で、ここの店主も奴の新作待ち、ということか?」

【睦月】
「それは……まぁ、そうなんだけども……それだけじゃないというかー、うん」

 見上げた先。
 店の出入り口にでかでかと掲げられた看板には『男性のみの来店お断り♪美少女大歓迎っ♪』の文字が。

【パオル】
「……これは権利の独占というやつなのではないのか」

【睦月】
「いや、実際他にもネットを貸してくれるとこはいくらでもあるんだよ。
 まぁ、若干ここの回線が他よりも優秀なくらいで……、
 その優秀さ加減も、今じゃ無用の長物って感じだし」
 
【パオル】
「大方慣れたと思っておったが、やはり未だにこの世の価値観がよくわからん時がある……」

【睦月】
「薫子の知り合いが特殊なだけなんだよ……世間一般がこうじゃないんだ……」

【パオル】
「……ほれ、とにかく行くんだろう?」

【睦月】
「……おう」

//bgネカフェ_受付

【店主】
「はぁい、いらっしゃ~い♪
 男の人は表の看板読んでから入ってきてねぇ」
 
【睦月】
「ど、どうも」

【店主】
「あら、もしかして朝比奈先生の新作持ってきてくれたの?
 ――って、まぁ!!」
 
【パオル】
「えっ、なっ、なんだ」

【店主】
「…………きゃわいいわぁ!!!
 ちょっと助手くん!誰この子!?いつからこんな可愛い子が入ったのよ!
 そういうのは真っ先に教えてって言ったでしょ!?」

【睦月】
「い、いや、そんな話聞いてませんから!」

【店主】
「はぁ~~~……いいなぁ……かわいい……ねぇ、貴女名前は?」

【パオル】
「ぱ、パオルという」

【店主】
「パオルちゃん……はぁ……ウチに来ない?ネット使いたい放題だけど!
 今なら最新機種も専用で使わせてあげちゃうんだけどなぁ~??」
 
【睦月】
「……ウチのパオルを誘惑するのやめてもらえます?」

【店主】
「えぇ~?だめぇ?」

【パオル】
「わ、私は睦月の手伝いをすると決めているからなっ!」

【睦月】
「ぱ、パオル……!」

【店主】
「ちぇ~っ。
 それでぇ、今日はぁ、なんのぉ、ごようですかぁ」
 
【睦月】
「いきなりやる気なくさないでくださいよ……新作と、あと、
 ネットを、借りたくて」
 
【店主】
「……ほおん?ほんほんほん、とりあえず新作はいただきますけれども、
 ふぅん……?使うの?ホントに?」
 
【睦月】
「うぐっ……ど、どうにか、新作で勘弁していただくことは」

【店主】
「……だぁめ♪」

【睦月】
「ですよねぇ……」

【パオル】
「おい、私を放置するな。
 一体何の話だ」
 
【睦月】
「あぁ、その……ここのお店は代金ってことで、その」

【店主】
「可愛い可愛い女の子にオナってもらって、アタシがそれを鑑賞するの♪」

【パオル】
「お、おなっ!!!!?」

【店主】
「鑑賞っていっても正確には声を聴きたいだけだからぁ、
 別に嘗め回すように見ることは……ん~、たまに?しかないんだけどねっ♪」
 
【パオル】
「ま、まさ、か」

【睦月】
「……あー、やっぱり、厳しいなら別に――」

【パオル】
「せっかく楽しみにして………このっ………!」

【睦月】
「ぱ、パオル?」

【パオル】
「……いいだろうっ!受けてたってやるっ!」

【店主】
「まぁっ♪」

【睦月】
「ま、まじか」

 ………………………。
 
 ………………。
 
 ………。
 
//ブラックアウト

//bgネカフェ_受付

 そうして、若干やけ気味なパオルは店主さんに案内されていき。
 
 俺は『終わったら二人で好きにネットしていいからねぇ♪』とのことだったので、、
 受付のところで待ちぼうけだ。
 
【睦月】
「はぁ……何やってるんだ俺は……」

 仮にも、仮にもキスまでいったんだぞ!
 いや、風呂屋でもっとすごいことしたけど……。
 
 そのパオルをこんなところに連れてきて!
 ばかっ!ばか!俺の馬鹿!
 
【睦月】
「ぐおおお!俺はなんという大馬鹿ものなんだぁ……!!!」

【店主】
「はぁい、そこの大馬鹿ものくぅ~ん♪」

【睦月】
「え、あ、はい……大馬鹿ものです……」

【店主】
「こっちこっち、おいでおいで♪」

【睦月】
「え、え?」

//ブラックアウト

 そういって手招きされたのはカウンターの向こう側。
 暖簾の後ろへと連れていかれる。
 
【睦月】
「え、あの、店主さん?こっちって普通にお店の見ちゃいけないところなんじゃ?」

【店主】
「ふふ、助手くんはいつも朝比奈先生の新作届けてくれるからねぇ。
 サービスしてあげちゃおうと思って♪」
 
【睦月】
「さ、さーびす……ごくり」

 ま、まさか、そんな、あだるてぃな展開になるのか?
 急に!?
 
【睦月】
「い、いや、俺は、その、心に決めた相手としかそういうことはするつもりがなくて」

【店主】
「はい、ここでごゆっくりどーぞっ♪」

【睦月】
「へ?」

//bgネカフェ_室内
 
 連れてこられたのは一見普通のネカフェの一室。
 
 ソファとテーブル、ヘッドホンがつながれたパソコン一式。
 
 だが明らかに他と違うのは、画面に映し出されたパオルの姿だった。
 
【睦月】
「ま、まさか」

 恐る恐るヘッドホンを装着してみると。

//cgネカフェでオナニーパオル

【パオル】
「まったく……睦月のやつめ……!
 少しはこっちの気も察したらどうなんだ……!」
 
【睦月】
「う、うぉぉ」

 パオルの言っていることは多少気になるが、しかし。
 本当にパオルの部屋の様子が丸わかりなようだ。

【パオル】
「あんの馬鹿っ、ばかむつきっ!ばかむつきっ!!」

 ……なんだかすごくバカバカ言われている。
 
【パオル】
「せっかくまた……気持ちよくしてもらえると思ったのに……」

【睦月】
「っ……!!!」

 ま、まさか、パオルは期待してたのか?
 お、おお、俺、俺と、その、そういう!?
 
 い、いい、いや、まったく自信がなかったといえば嘘になるが、
 絶対口に出さないくらいには思っていたし!?
 
 いざこうしてパオルの言葉を聞くと、その、なんだか高ぶるものがあるな……!
 
【パオル】
「睦月の、ばかめ……本当に……もう、知らんからなっ……!」

 悪態をつきながら、パオルは自分のそこへと手を伸ばしていく。
 
【パオル】
「いつもいつもっ、んっ、ひとの胸だの、足だのっ、見ているっ、くせにっ」

 しゅりしゅりと音を立てながら、クロッチをこするパオルはすぐさま気持ちよさそうな吐息を漏らし始める。
 
【パオル】
「いくらっ、んんぅっ、隣で、はぁっ、はぁっ、おなにーしてても、気付かないんだから……っっ」

 もどかしそうに、強引な手つきで下着をずらすと。
 くにくにと入口のところに浅く指を出し入れしながら、
 クリトリスを焦らすような手つきで嬲り始める。
 
【パオル】
「ばか、むつきっ、ほんとっ、んんっ、もうっっ」

【睦月】
「ごくり……っ」

 が、が、画面の向こうとはいえ、
 現実の女の子が、ぱ、ぱぱ、パオルが、
 俺の名前を呼びながらオナニーしている……!!!
 
 その光景と、ヘッドホンから聞こえてくる生々しい吐息のせいで……!
 俺の息子は完全に臨戦態勢になっていた……!!
 
【パオル】
「はぁっ、んぅっ………睦月ぃっ、ひあぁっ……きもちぃ……、
 くりくりきもちいよぉ……っっ」
 
 くっ……!
 見てはいけないと分かっていても目を離せないどころか、
 俺も息子を扱きたくて堪らなくなってくる……!!
 
 ご丁寧にテーブルの上にはティッシュが置かれている以上、
 店主さんだってそういうつもり、なんだよな……???
 
【パオル】
「んひぃうぅっっ、むつきぃっ……むつきぃっっ」
 
 もの欲しそうにくちゅくちゅと音を立てながらおまんこの入口に指を浅く出し入れしたり、
 クリトリスをこりこりと嬲るパオル。
 
 ……えぇいっ!こんなの我慢できるかっ!
 
 グンッとズボンを持ち上げる息子をあらわにして、本能のまま扱く。
 
【睦月】
「パオルっ……!!」

 ここがネットカフェで、すぐそばに店主さんや他のお客さんが居るかもしれないことをなど忘れて、
 一心不乱に息子を扱きあげる。

【パオル】
「おちんちんほしいよぉっ……むつきのおちんちんで、ずぷずぷってしてほしいのぉ……!」

 蕩けた声と表情で激しく自分のおまんこを刺激するパオルを見ながらのオナニー。
 
 経験したことのない快感が身体全体を包み込む。

【パオル】
「睦月のでとんとんって、はぁっ、はあっ……いっぱいとんとんってしてほしいのにぃっ」

 パオルは限界が近いのか、必死に絶頂を堪えるような表情で一層指の動きを速める。

【パオル】
「ひうぅうっっ……!イッちゃうんだからあっ……しらないひとに、きかれちゃうんだからあっ……!!!
 くりくりしてっっ、んうぅっ、えっちになっちゃうこえ、しらないひとにきかれちゃうんだからあっっ」
 
【パオル】
「はっ、はあっ、あっあっ、イクっ、イクぅっ……っ、っっ、~~~~~~っっっ!!!!!」

【睦月】
「出るっ……!!」

 ―――びくっ、びゅくんっびゅくんっ!!!!
 
 思い切り射精するのと同時に、パオルも腰をグンッと突き出して絶頂する。
 
【パオル】
「ひゃあぁっ、ぁっ、あぁっ……いっちゃったぁ……
 むつきの、おちんちんかんがえながらいっちゃった……あっ、はぁっ、はぁっ」
 
 どこか焦点の合わない蕩けた瞳をしたパオルは、
 びくっびくっと腰を震わせながら、満足そうな表情を浮かべていた。
 
 ………………………。
 
 ………………。
 
 ………。
 
//ブラックアウト

//bgネカフェ_室内

【睦月】
「そ、それじゃあ、ありがとうございました」

【店主】
「むふふ♪またいつでも来てねん♪」

 ……事を終えてから。
 
 気まずさマックスの中、無言でイベント情報を検索し、
 近々町のはずれでイベントを行うらしい情報をゲット。
 
 事に関してはひとことも話さず、早々に部屋を出たのだった。
 
【パオル】
「………っ」

【店主】
「あっ、パオルちゃんはちょ~っとこっちに来てね♪」

【パオル】
「……?」

【店主】
「助手くんは先に出てる、ほらっ。行った行った」

【睦月】
「あ、はい……じゃあ、店先に居るからな」

【パオル】
「……ん」

 くっ、気まずい……!!!
 
 圧倒的に気まずい!!!
 
 一体どう声をかけたものか……いやしかし!
 あのパオルの姿は今思い出しても股間にズキンとくるものが…!!!
 
 などと考えながら、俺は一足先に店を出た。
 
//ネカフェ_外観

【睦月】
「ふぃ……」

 幸い、ネカフェを訪れるお客は少ないらしかった。
 
 おかげで、店先でたたずんでいても他のお客さんに気まずい思いをさせなくて済む。
 
【睦月】
「しかし、どう声をかけたものか……」

 やはりここは男としてビシッと一戦迫るべきなのだろうか?
 
 ……出来るのか?俺に?
 
 ……そんなことが出来るのならばもっと早くに風呂屋にだって入ったし?
 それこそ町の誰かなり、オーナーさんや店主さんを口説いてみせたはずだ。
 
【睦月】
「はぁ……つくづく己の甲斐性のなさが恨めしい……、
 ……いや、恨めしいなら踏み出せという話だけども」
 
 と、思考のループに陥りかけていると。
 不意に声をかけられた。
 
【女性】
「おや、見慣れない顔の方ですが新しい店員さんですか?」

【睦月】
「へっ?いや、俺はちょっと人を待っていて……」

 顔をあげると、そこには黒髪を一つに束ねた髪形に、
 黒いスーツ姿のクールでハスキーな女性が立っていた。

【クールでハスキーな女性】
「そうですか。よもや男性店員さんに自慰中のはしたない嬌声を聞かれてしまうのかとドキドキしてしまいました」

【睦月】
「ぶふぉっ!?」

【ヤバそうな雰囲気の女性】
「……?
 大丈夫ですか?どこか具合でも?おちんちんの具合でもよろしくありませんか?」
 
【睦月】
「い、いいい、いえっ!!!ご心配なくっ!!?」

 な、な、なんだこの人は!!!明らかにヤバい!!
 
 こんな真顔で淡々とじ、じじ、自慰だのなんだのと言う人はいくらなんでも見たことが無いっ!!!
 
【ヤバそうな女性】
「そうですか……では、入店してもよろしいでしょうか」

【睦月】
「え、えぇ、どうぞ、お気になさらず」

【ヤバい女性】
「よければ、ご一緒しますか?」

【睦月】
「しっ、しませんからっ!!!!」

【危ない女性】
「そうですか、それでは失礼します」

 礼儀正しくお辞儀をすると、女性は表情ひとつ変えずにすたすたと店内へ入っていった。
 
 それと入れ替わりに、見慣れないリュックサックを持ったパオルが出てくる。
 
【パオル】
「くっ、あの店主め……こんなものどうしろっていうんだ……!」

【危ない女性】
「あの」

【パオル】
「ん?なんだ」

【危ない女性】
「もしかして、あちらの男性とご一緒に?」

【パオル】
「は?……っ!
 そ、そうだがっ!!?」
 
 いやいやいや!誤解を招く!
 そこで同意するのは誤解を招くから!!!
 
 ……いや、結果的に誤解じゃないんだけど。
 俺が見てたってことはパオルは知らないから。

【危ない女性】
「そうですか、ではお元気で」

【パオル】
「……???」

 女性はそれだけ言うと、ニコッと微笑んで店へと入っていった。
 
【睦月】
「変な人だったな……」

【パオル】
「おい、睦月。なんだあいつ」

【睦月】
「いや、俺もさっき急に話しかけられて」

【パオル】
「ほぉん……」

【睦月】
「で、その荷物は?」

【パオル】
「てっ、店主からのもらい物だ!」

【睦月】
「へぇ、何貰ったんだ?」

【パオル】
「そっ、それは、その、ひっ、秘密にしろと言われたから言えんっ!」

【睦月】
「む、なんだそれ。余計気になるぞ」

【パオル】
「し、知れば二度とネットは貸さんと言っていたぞ!!!」

【睦月】
「ぐ……!それは困る……!!
 ……ま、なんでもいいか。情報は手に入ったことだし、帰るとするか」
 
【パオル】
「う、うむ」

 そんなわけで、再び自転車にまたがり俺たちは帰路についた。
 
 ……ん!?そういえばナチュラルに話せてたじゃないか!
 
 俺も、男としての器量が上がってきたのかもしれないな。
 うんうん。
 
 ……気のせいか。
 
 ………………………。
 
 ………………。
 
 ………。
 
//ブラックアウト

◆エピソード6「」

//bg睦月と薫子の家_一階_昼

【薫子】
「それで、相談とはなんぞや」

【睦月】
「あ、あぁ……」

 ネカフェから帰ってきて、数日経ったある日。
 
 俺は、意を決して薫子に相談を持ち掛けていた。
 
【睦月】
「こ、こないだ、その、ネカフェに行っただろう?」

【薫子】
「んあー、そうだったねぇ」

 ぼりぼりとお尻をかきながらソファに寝ころび、だるそーに聞く薫子。
 対して俺は床に正座。
 
【睦月】
「そんとき、その……店主さんに裏へ連れてかれて、
 その、パオルのしてるところを見てしまってですね……」
 
【薫子】
「ふぁー」

【睦月】
「お、俺もさすがに自分の名前を呼ばれながらオナニーする女の子の姿を見て、
 堪らずですね!し、しし、してしまいまして……」
 
【薫子】
「ふぇー」

【睦月】
「それで、その日の夜からまともに話せていないのです……」

【薫子】
「ほへーん、”その日の夜から”ねぇ」

【睦月】
「夜、その……部屋に来ないから、どうしたんだろうって思って探してみたら一階に居てさ」

【薫子】
「ほほん?」

//ブラックアウト

//bg睦月と薫子の家_一階_夜

【睦月】
『誰かと話してるみたいだったから、てっきり薫子と何か話してるのかと思って聞いてたら』

【パオル】
「――……―――ッ!?」

【睦月】
『なんだか焦ったような、怒ったような様子だったから薫子じゃないのかなーと思って、声をかけてみたんだよ。
 そうしたら……』
 
【パオル】
「っ!!?む、睦月……今の、聞いてたのか?」

【睦月】
『って言ったあとに、聞いてないぞ、どうしたんだって聞いたら』

【パオル】
「しっ、しばらく……一人に、してくれ……」

//ブラックアウト

//bg睦月と薫子の家_一階_昼

【睦月】
「……って言われてぇ!そっからずっと放置なんだよお!」

【薫子】
「だーもう喚かない喚かない。
 まぁ……そうだなぁ、今夜あたり何か話に来るんじゃないかな?」
 
【睦月】
「いくら話かけようとしても露骨に避けられるしもう俺どうしたらいいか――へ?今夜?」

【薫子】
「そ。だから、イベントの準備よろしくね~」

【睦月】
「あ、ちょ、おい!薫子!待ってください薫子先生!せんせーっ!!」

//ブラックアウト

 結局、薫子はそれだけ言って部屋に籠ってしまった。
 
//bg睦月と薫子の家_一階_夜

 仕方がないので、印刷屋さんに出す発注書を作ったりしながら。
 
 イベントの準備を進めていると、いつの間にやら日は暮れて。
 
【パオル】
「っ……む、つき」

【睦月】
「えぁっ、あ、あぁ、ど、どど、どうした?」

 ネカフェで貰ったらしいリュックサックを背負ったパオルが、おずおずと声をかけてきてくれた。
 
 久しぶりに話すので緊張しているのがダダ漏れだったが、そんなことはどうでもいい!
 
 久しぶりでも緊張ダダ漏れでも、もう一度話してくれるだけで十分だった。
 
 あの時の、覗いていたことを謝らなければならない。
 
 そして、自分の犯した恥ずかしい罪も全部懺悔するのだ。
 
 それで、許してもらえるかどうかわからないけど、だけど。
 
 何故だかそうせずには、居られない気持ちだった。
 
【パオル】
「その……だな、少し、着いてきてくれるか」

【睦月】
「……あ、あぁ」

//bg睦月と薫子の家_外観_夜

 パオルに連れられて、家を出る。
 
 どこへ向かうんだろう?
 
【パオル】
「……っ、おわっ」

【睦月】
「だっ、大丈夫か?」

 たどたどしい足取りで小石に躓くパオル、緊張しているのかもしれない。
 
 心なしか、背負ったリュックサックの紐を掴む手が震えているようにも見える。
 
【パオル】
「だっ、大丈夫だっ」

 照れ隠しなのか、それとも怒っているのかわからない口調で、
 そう言ったパオルはずんずんと茂みを掻き分けていく。
 
【睦月】
「そっちは……小川、か?」

//bg小川_夜

【パオル】
「ここで、良い」

 少し開けた、小川のほとり。
 
 そこで立ち止まると、パオルはリュックサックを抱きかかえながら、
 こちらを振り向いた。
 
【パオル】
「今日は、その……睦月に、あ、謝りたいことがあって」

【睦月】
「そんなっ!謝らなきゃいけないは俺のほうで――」

【パオル】
「そ、そうじゃないんだっ!!
 ……違うんだ、聞いてくれ」

【睦月】
「お、おう……?」

 一体何を謝るというんだろう。
 
 パオルは何もしてないじゃないか、謝らなきゃいけないのはどう考えても俺のはずなのに……!!
 
【パオル】
「今日話したいのは、その、睦月の昔の話についてなんだ」

【睦月】
「昔の……?」

【パオル】
「っ……あ、あぁ。教えてくれただろう?
 両親のこと、私の知らない過去の……う、宇宙、人の、こと」
 
【睦月】
「?……あぁ、そうだな」

【パオル】
「それで、その、睦月はもう気にしていないと言っていたが……その、だな、
 きっと、聞けば、気にしていないとは、言えないだろうと、思って」
 
【睦月】
「……???」

【パオル】
「すぅ、はぁ…………ネットカフェから、帰ってきた日。
 あの日、声が聞こえたんだ」
 
【睦月】
「あ、あぁ、前に言ってた夢で聞こえるっていう声、か?」

【パオル】
「そうだ……だが、そうじゃなかったんだ。
 あれは夢なんかじゃなくて、私に直接、私にだけ届いていた声だったんだ」
 
【睦月】
「……??????」

【パオル】
「”彼女”は、ネットカフェに居たことを知っていた。
 店主に、薫子の本を届けにきたことも知っていた。
 ……睦月は、”彼女”から店の新しい店員だと間違われたのだろう?」
 
【睦月】
「あ、あぁ、あの時はそうだったけど……って、なんで知って――
 ……え?は?」
 
【パオル】
「ネットカフェですれ違った彼女は、私の……私を追っていた奴らの、仲間だそうだ。
 そして”彼女”は、私のことを教えてくれた……」

【睦月】
「パオルの、こと?」

【パオル】
「わっ、わた、私……私、は、む、睦月の……むつ、きの……」

【睦月】
「お、おい、大丈夫か?顔色が――」

【パオル】
「近づくなッ!!」

【睦月】
「っ!!?」

【パオル】
「近づかないで、そこで、聞いてくれ……」

【睦月】
「……分かった、聞くよ」

【パオル】
「っ……私は、人じゃ、ないんだ」

【睦月】
「……?」

【パオル】
「私はっ!睦月の両親たちを、殺した連中と、同じ生き物で……ぐすっ、
 あの、あの、施設でっ、だからっ、
 私はっ、人じゃないからっっ、睦月とっ、一緒に居る資格がないからっ!」
 
【パオル】
「だからっ、私を殺してくれっ――!!」

 ――カランッ、カラン。
 
 泣きながら、叫ぶように言ったパオルの手から落ちたリュックサックの中には、
 どこから集めてきたのか、ナイフや尖った木の枝――、
 そして、初めて会った時に握りしめていたガラスの欠片が入っていた。
 
 パオルは、人じゃない。
 
 そう、言ったように聞こえた。

 たぶん、そう言ったんだと思う。
 
 声が、パオルの夢の中じゃなくて、現実に聞こえていた。
 
 その声は、パオルの知らないこと――パオルの知らないはずの、
 俺とあのヤバそうな女の人の会話を知っていた。
 
 それは、声が幻聴なんかじゃなくて、本当に夢の中の声でもなくて、
 現実に聞こえてくるどこかの誰かの声であることと、
 パオルが”どこかの誰かと身体ひとつで交信できること”を証明していた。
 
【睦月】
「………」

 こんな世の中に居るんだ、今更そんなことじゃ驚かない。
 
 パオルが、俺の両親の敵と同じ生き物らしいって言われたって、
 別に驚きはしなかった。
 
 なぜなら――なぜならば、だ!!!
 
 なぜなら、”そんなことどうでもいい”からだ!!!
 
 そう、俺はこのとき猛烈に怒っていた。
 なぜかって?
 
 こっちはなぁ!自分が何も知らずに好きな子のえっちなオナニー姿見せられて、
 俺もオナニーしちゃいましたごめんなさいっていう!
 男の尊厳も何もあったもんじゃない謝罪をしようっていう覚悟まで決めていたんだぞ!?
 
 それがなんだ!
 ”人間じゃない”!?”両親の敵と同じ生き物”!!!!?
 
 心底!心の、底から!!
 どうでもいいねっ!!!!!
 
【睦月】
「パオル……言いたいことは、それだけか?」

【パオル】
「ひぐっ、ぐすっ……」

【睦月】
「………」

 リュックサックの中身をつかみ取り、その辺の土を掘り返してざくざくと埋めていく。
 
【パオル】
「えぐっ、ぐすっ……ふぇ……?
 む、睦月、何を……」

【睦月】
「くそ……くそっ……くそっ!!!!」

【パオル】
「ひゃうぅっ」

【睦月】
「ああああくそっ!!!
 俺はこんなくだらないことのためにここ数日思い悩んだのか!?
 こんなに、こんなにも悩んで、薫子にパオルのオナニー姿見てオナニーしましたって報告までしたのか俺はぁぁぁああ!!!」
 
【パオル】
「ふぇ、え、えぅ、む、むちゅき……?
 にゃにいってるの……?」
 
【睦月】
「あのなぁっ!!!」

【パオル】
「ひゃいっ!」

【睦月】
「パオルが何者かなんて、今更言われたところで俺がどうこう言うと思ったのかっ!!?」

【パオル】
「あ、ぅ、ぅん、おもった」

【睦月】
「気にしてないって言っただろっ!!!!?
 どうして人の言うことを信じないんだよっ!!」
 
【パオル】
「だ、だって、それは、事情を、知らなかったから」

【睦月】
「事情を知ったからって何か俺が心変わりするほどっ!
 親の話をしたか!!?してないよなぁ!?!?
 俺がいつ!どこで!そんな過去に縛られるみたいな話をしたんだよ馬鹿っ!!!」
 
【パオル】
「ばっ――な、なんじゃとぉ!!?
 あんだけうなされてたクセに!!あんだけ、あんだけうなされて!!
 気にしてないと思うやつが居るかばーかばーかっ!!」
 
【睦月】
「こンの……!!!
 だからってどうして”殺してくれ”なんてわけのわからない結論になるんだよっ!?
 それで俺の気が晴れるとでも思ったのかよっ!!」
 
【パオル】
「そ、そそんなの知るかあ!
 あ、あ、あーんなことがあったのに、ち、ちゅーまでしたのに、
 手も出して来ないような不能童貞には身体を好きにさせるくらいしかないと思っただけじゃボケーっ!!」
 
【睦月】
「なっ……!!!!
 そ、そっちだって!人の寝てる横でオナニーするくらい溜まってるなら、
 もっとはっきり言ってくれればいいだろうっ!!?」
 
【パオル】
「なあっ……!!!?
 お、お前っ!!さっきもどさくさに紛れて言ってたがネカフェで覗いてたなっ!?
 ぐっ、こ、この、馬鹿っ!大馬鹿っ!!!馬鹿童貞っ!!!」
 
【睦月】
「俺だって覗きたくて覗いたわけじゃ――!!!」

 ――コロロンッ。
 
 言い合いの最中、リュックサックからこぼれ落ちてきた”モノ”を見て、
 
 俺の中で何かが弾ける音がした。
 
【睦月】
「……よしわかった、その身体、好きにさせてもらっていいんだな?」

【パオル】
「えっ、な、なんじゃ」

【睦月】
「いいんだなっ!!?」

【パオル】
「うぐっ、あ、あーいいぞ!?
 良いに決まってるだろう!!!?」
 
【睦月】
「じゃあ……俺の言うとおりにしてもらってもいいかなっ!!!?

//ブラックアウト

//cg木に寄りかかってワンピースをたくし上げるパオル

【パオル】
「んっ、こ、これで良いのか?」

 ワンピースをたくし上げるパオルの足元にしゃがみこむ。
 
 間近で見る下着、パオルの褐色なお腹と白く伸びる足に、
 思わずドキドキしてしまう……!
 
 が、しかし。
 今はそれどころではないのだ。
 
【睦月】
「あぁ、それでいい。
 そのまま、絶対動くなよ」
 
 念押しをして、パオルの腰へと手をのばす。
 
【パオル】
「ふ、ふんっ、好きに、すればいいっ」

【睦月】
「もちろんだ、好きにさせてもらうからな」

 パオルのふざけた考えも、言い分も。
 もはやどうでもよかった。
 
 ここ数日、思い悩んだそのおかえしをさせてもらうのだ!
 
 下着の上から、パオルのおまんこをなぞるように撫でる。
 
【パオル】
「んっ、くぅっ……」

【睦月】
「なんだ、もう感じるのか?
 感じるなら、きちんと言葉に出してもらうからな」
 
 う、うわあ!
 俺は何を恥ずかしいことを言っているんだ!
 
 さぞ俺の顔は赤くなり、声の端は震えていることだっただろうが、
 それはパオルも同じことだったのでおそらく気付かれてはいないだろう。
 
【パオル】
「なっ、なにをっ、そ、そんなこと言えるわけがないだろうっ」

【睦月】
「なんだ、好きにして良いんじゃないのか?」

【パオル】
「くぅうっ……」

 ふにふにのおまんこを少しだけ押すようになぞっていると、
 徐々に濡れてくるのがわかる。
 
 少しこりこりとした感触のところを軽く引っ掻くようにすると、
 ぷるるっとパオルの腰が震える。
 
【パオル】
「き、き……も、ちぃ……」

【睦月】
「ん?」

【パオル】
「そ、そこっ、かりかりってされると、きもちいっ!」

 やけ気味になりながらも、顔を真っ赤にして言うパオルに、
 ゾクゾクとした気持ちよさを感じてしまう……!
 
 も、もっと、言わせたい……!
 もっとパオルに言ってほしい……!!
 
 その一心で、クリトリスらしきところを親指の腹でゆっくり、
 こねまわすように押しつぶす。
 
【パオル】
「んくぃっ、はぁっ、そこ……!」

【睦月】
「そこ?」

【パオル】
「く、くぅっ、くりとりすっ、ぐりぐりってされるとっっ、ひぅっ、
 きもちいっ、はあっっ、きもちいですっっ」
 
 じっくりと刺激するうち、徐々にぴくっぴくっと腰が動き始める。
 
【睦月】
「動くなって言っただろ」

 そう言いながら、しゅりしゅりと指の腹で擦るような動きに変えていく。
 
【パオル】
「はあぁっ、はぁっ、だ、だってっ、んぅっ、くりくりばっかりっ、
 きもちよくするからっっ、しゅりしゅりってするからあっっ」
 
【睦月】
「きもちいなら良いだろ?」

 指の動きを速める。
 
【パオル】
「ひぃいうっっ、あっ、ぁっ、しゅごっ、んうぅっっ、
 くりくりいっぱいっ、ひゃあぁっ、いっぱいこしゅれてきもちいよおっっ」
 
 お風呂での時を思い出しながら、パオルがイった時と同じくらい、
 激しく指を動かす。
 
【睦月】
「イキそうになった時も、ちゃんと言うんだぞ」

【パオル】
「うんんっっ、イキそうっっ、あぁっ、あっあっ……!
 くりくりイッちゃうっ、びくびくってイッちゃうっっ……!」
 
 カクカクと下半身の力が抜け始めて、腰が揺れ始めたところで指を離す。
 
【睦月】
「じゃあここまで」

【パオル】
「ひゃうぅっ――……ふぇっ……?」

 そこで、さっきリュックサックから落ちた”モノ”――ピンクローターを取り出す。
 
【睦月】
「これ、あのネカフェの店主さんから貰ったのか?」

【パオル】
「はぁ、はぁ、そ、そうだがっ!?」

【睦月】
「ふぅん、そっか」

 ――パチっ、ヴヴヴヴ。
 
 ”強”と書かれたところにスイッチを入れて、クリトリスの辺りにあてがう。
 
【パオル】
「ま、待っ――……んひぃいっ、あぁあぁっっ」

 振動するローターが触れた瞬間にパオルの腰がびくびくっと震える。

【睦月】
「ちゃんとイキそうになった言うように」

【パオル】
「はぁっ、ああぁあっっ、くうぅうっっ……!!
 ぶるぶるすごくってぇっ、またすぐっ、すぐうっっ」
 
【睦月】
「はい、じゃあ弱」

【パオル】
「くひぃいっ――……んぁ、ぅ、な、なんでっ」

【睦月】
「ここ数日勝手な思い込みで俺を避け続けたことに対する恨みと、
 これまで我慢してた分と、自分の恥ずかしい懺悔を誤魔化したいのと、
 パオルにえっちな意味で気持ちよくなってほしいためです」
 
【パオル】
「わっ、わけのっ、んぅっ、わからないことをっ」

【睦月】
「あとはパオルからおちんぽくださいって言ってほしいからですッッ!!!」

 ――パチンっ!ヴヴヴヴヴっ!!
 
【パオル】
「んひぅうっっっ……!!
 わ、わかったあっっ、いうっっ、いうからあっっ」
 
【睦月】
「もう二度と自分を粗末にするようなこと言わない?」

【パオル】
「いっ、いぃっ、いわないぃっ、いわないからぁっ
 だからっ、お、ぉ……お、ちんぽ、いれてぇっっ、イかせてぇっっ」

【睦月】
「それじゃあ遠慮なく……ん」

【パオル】
「ふぁ、む、睦月……?」

【睦月】
「い、いや、どう入れたものかと……ええと、こうか」

【パオル】
「え、ひゃあっ」

//cg睦月に抱きかかえられるパオル

 自分の息子を取り出してパオルの下着を脱がしてから、
 パオルのお尻と腰に手を回して、グッと抱きかかえる。
 
 そして、そのままおまんこの入口にあてがう。
 
 とろとろになったそこは、熱くて先っぽを当ててるだけなのに堪らなく気持ちいい。
 
【パオル】
「んっ、く、はあぁ……睦月のが、当たってる……」

【睦月】
「す、すまん、パオル、入れてもらってもいいか」

 さっきまでの強気な態度などもうボロボロになりながらも、
 ここまで来たからにはパオルとえっちしたい……!

【パオル】
「なっ、お、お前というやつは……!
 し、しょうが、ないな……んっっ」
 
 悪態をつきながらパオルが二、三度腰を揺らしてから、
 グッと腰に力を入れると、パオルのおまんこにゆっくりと挿入されていく。
 
【睦月】
「く、おお」

 こ、これがおまんこの中……!!!
 
 にゅるにゅるでキツくて、なによりアツい……!!
 
 もうさっきまでのいろんなことが全てどうでもよくなるほどの気持ちよさだ……!!!
 
【パオル】
「はあっっ、睦月のおちんちんがぁ、入ってくるぅっ……んうぅうっ」

【睦月】
「くあっ、い、痛く、ないか?」

 やがて根本まで挿入が終わった時、快感でいますぐ射精しそうになりながらも、
 精一杯の気づかいで聞いてみるものの。

【パオル】
「ふぁあぁっっ………!!」

 パオルは恍惚の表情を浮かべて、ただただ快感に酔いしれていた。
 
 同時に、パオルの腰がぶるるっと大きく震え、
 中が痛いほどきゅうきゅうと締め付けてくる。
 
 そこでようやく自分がおかしなことを聞いていたことに気が付いた。

 い、いや、そうか!痛いわけがないじゃないか!
 俺は何を言っているんだ!?

【パオル】
「むつきぃ……睦月いっっ」

【睦月】
「へぁ?んんむっ!!?」

 一人困惑しているとパオルに強引に唇を奪われる。
 
 と、同時にがくっがくっと不規則ながらに腰を振られて、
 おちんぽが激しくこすりあげられる。
 
 狭くて熱く蕩けそうな中のひだひだがカリにみっちりとくっつきながらこすりあげてくる。
 
【パオル】
「んちゅっ、んちうぅうっっ、はぁっ、はあっ、んむぅううっっっ」
 
【パオル】
「ひゃあっっ、はあっ、はあっ、むつきのっ、むつきのおちんぽきもちいっっ、
 あつくてっ、おくまでこつこつってっっ、きもちいよおっっ」
 
【睦月】
「ぱおる……!パオルっっ」

 徐々に慣れてきて、パオルの動きだけではもどかしくなってくる。
 
 自分から腰を突き出して、性感を高めていく。
 
【パオル】
「むつきもっっ、むつきもきもちいっ?
 んうぅっ、私のおまんこでっ、いっぱいかんじてるっっ?」
 
【睦月】
「あぁ……めちゃくちゃきもちい……!」

【パオル】
「んんっっ、あぁあっ、よかったぁっ、むつきっ、むつきいっ
 しゅきっ、むつきすきっ、だいしゅきっっ」

【睦月】
「っ……!!
 俺もっ好きだぞパオルっ……!!」
 
 瞬間、急激に高まった射精衝動をぶつけるように腰をめちゃくちゃに振る。
 
【パオル】
「ひゃあぁあっ、はあっ、んうぅううっ、はげしいのっっ、きもちいよおっっ」

【睦月】
「も、もう出そうだっ……!」

【パオル】
「うんっっ、いいよっ、いいよっっ、なかにいっぱいびゅーってしてっっ」

【パオル】
「私もイクからっ、むつきのおちんちんでイクからあっ、
 んうぅううっっ、はあっ、ああああっっ」
 
【パオル】
「ずっとおっ、ずっとこうしたかったのぉっ、むつきのおちんちんでおまんことんとんってしてほしかったのおっ
 きもちいっっ、きもちよくてっっ、はなれられなくなっちゃうよおっ」
 
【睦月】
「ずっと離れなきゃいいだろっ……!
 俺だって、こんなに気持ちいのっ、忘れられないからなっ……!!」

【パオル】
「んうぅうっっ、はなれないっっ、はなれないからあっっ、
 いっぱいっ、いっぱいむつきのおちんちんでえっちになりゅからあっっ」
 
【睦月】
「俺もっ……!パオルの中にいっぱい出すからなっ!」

【パオル】
「ひあぁあっっ、おちんちんっっ、むつきのおちんちんっっっ」

【睦月】
「くう、出るっ………!!!」

 ―――びゅくっ!びゅくんっびゅくんっ!!!
 
【パオル】
「ひゃあっ、あああ―――っっっ!!!」

【睦月】
「くおおっ、搾り取られるっ……!」

【パオル】
「ひやあぁっ……あ、あぁっ、イっちゃったあ……んうぅっ、
 しゅごい、でてる……むつきのおちんちん、いっぱいびゅくびゅくってしてる……」
 
【睦月】
「く、うぅっ」

【パオル】
「はあっ、はあっ……」

【睦月】
「うっ、く……や、やばかった……失神するかと、思った……」

【パオル】
「わ、私を抱えたまま倒れるんじゃないぞっ」

【睦月】
「し、しょうがないだろ!?こんなに気持ちよかったの初めてなんだから……!」

【パオル】
「あ、ぅ……その、えと……」

【睦月】
「な、なんだよ」

【パオル】
「いっ、いつまで、こうしてるんだっ」

【睦月】
「あっ、す、すまんっ」

 ………………………。
 
 ………………。
 
 ………。
 
//ブラックアウト

//bg小川_夜

【パオル】
「……っ」

【睦月】
「………」

 お互い、川でちゃぱぱっと局部を洗ってから。

 どちらからともなく、何を言うでもなく、こっそり手を繋いだ。
 
【パオル】
「なっ、なんとか言ったらどうなんだっ」

【睦月】
「おっ、俺かよっ!じ、じゃあ、ええと、
 な、なんで手つなぐんだよ、帰るだけだろ」

【パオル】
「なっ、お、お前こそ指を絡めてきただろうっ」

【睦月】
「そっ、そうだけどっ!なんか話せって言うからっ!」

【パオル】
「わ、私はただ、その……い、いいだろう別にっ!」

【睦月】
「だ、だったら俺だっていいだろ別にっ!」

【パオル】
「そ、そりゃあ、まぁ……構わんが……」

【睦月】
「う、な、なぁ」

【パオル】
「こ、こんどはなんだっ」

【睦月】
「……その、なんだ、これからも、ウチに居てくれる、よな」

【パオル】
「っ」

【睦月】
「お、おお、俺は、その、ぱ、パオルが、居てくれないと、
 その……ツラい、です」
 
【パオル】
「……そう、だな」

【睦月】
「!!」

【パオル】
「もう、自分を粗末にしないと言ったからなっ」

【睦月】
「……あぁ!」

//bg睦月と薫子の家_外観_夜

 そうして、なんだかんだのうちに無事仲直り?を済ませた俺とパオルは。
 
 家に帰ったあと、薫子に事の顛末を報告したところ。
 
//bg睦月と薫子の家_一階_夜

【薫子】
「二人から相談持ち掛けられた時はどーしてやろーかと思ったもんでしたわよ、まったく。
 小学生かっつーの」
 
 と、心底呆れながら若干説教のようなものを受け。

【薫子】
「……ま、一件落着してよかったね」

 一応の公認?をいただけたのだった。

 ………………………。
 
 ………………。
 
 ………。
 
//ブラックアウト

◆エピソード7「世界の真実」

//bg睦月と薫子の家_一階_昼

 そして、仲直りから数日。
 すっかり”声”も聞こえないというパオルは、積極的にイベント準備を手伝ってくれた。
 
 二人で協力することでイベント準備はとんとん拍子で進んでいき。
 
【睦月】
「おっし、あとは明日に向けてリヤカー持っていけば準備は完了だな」

 何事もなく、イベント前日を迎えていた。

【パオル】
「うむ。ようやくひと段落というところだな」

【睦月】
「出来上がったのは運搬してくれるって言うし、
 薫子とパオルには自転車で行き来してもらえばいいし……うん、大丈夫そうだ」
 
【薫子】
「なーにを言ってるかね、キミは。
 あたしはイベント終わり次第、なんだかんだと顔を出さなきゃいけないところがあるので数日帰れませーん。
 自転車はその時使うから、パオルちゃんは睦月のリヤカーで帰ること」
 
【パオル】
「ほほう、それはまた快適そうだ」
 
【睦月】
「あぁ……まぁ、いいけどさ。
 だったら、あとは準備して俺たちは出発を――」

 ――トントンっ。
 
 聞きなれない、玄関をノックする音。
 
【睦月】
「ん?はーい」
 
 お客さんなんて珍しいこともあるものだなーなんて思いながら玄関を開けた先には。

 とても久しぶりに見る、真っ黒い車と

【睦月】
「あ、あなたは」

【クールでハスキーな女性】
「どうも、ご無沙汰しております」

 ネカフェの出入り口で会った女性。
 そして、その隣には鋭い目つきをした白衣の女性の二人が立っていた。

【白衣の女性】
「邪魔するぞ、ウチのパオルはどこだ」

【睦月】
「ちょ、ちょっと、いきなり何を……ウチのパオル?」

【真咲】
「わたしの名前は九条真咲(くじょう まさき)、研究者だ。
 そっちはわたしのSP」

【冷華】
「八宮冷華(はちみや れいか)と申します」

【薫子】
「ちょっとちょっとぉ、こっちは明日のイベントで忙しいんですけどぉ?」

【真咲】
「ふんッ、知ったことではないな。
 お前らは自分が犯した罪の大きさを思い知るべきだ」
 
【睦月】
「はぁ、ええと、とりあえずなんのご用なんです?」

【真咲】
「パオルを返してもらおう」

【睦月】
「……え?」

【真咲】
「パオルは人間じゃない、そう告げたはずなんだがな。
 聞いていないのか?」
 
【睦月】
「いや、まぁ、それはぁ……」

【真咲】
「彼女は38年前に飛来した地球外生命体の大使としての役割を果たすため、
 地球人としての一般教養と基礎をインプットされた要人なのだ。
 来るべき地球外生命体の再来に備えて、我々の元で人間との友好的関係を築く使命がある」
 
【睦月】
「そ、そうなのっ!?」

 そ、そういえば、パオルが泣いてるものだからあまり詳しく話を聞いていなかったような気がする。
 
 まさかそんなことになっているとは……。
 
【真咲】
「では、パオル。帰るぞ」

【パオル】
「断る」

【真咲】
「……聞こえなかったのか?帰るぞ、パオル」

【パオル】
「私はイベントの手伝いを投げ出すつもりはない。
 それに、お前たちのことなど知らん」
 
【真咲】
「なに……?クソっ、やはり学習装置の影響で記憶に異常が出てるのか……!」

【パオル】
「あと、お前らはなんか好かん」

【真咲】
「なっ!?なにをぅ!?」

【睦月】
「あ、あの、冷華さん?」

【冷華】
「はい、なんでしょう」

【睦月】
「ええと、パオルってあなたたちと一緒に居たんです?」

【冷華】
「えぇ、一応」

【睦月】
「それは、そのぉ……家族的な?」

【冷華】
「いいえ。真咲はあの通り気難しい性格ですので、
 彼女も”彼ら”から言われ、渋々協力してくれていた様子でした」
 
【睦月】
「し、しぶしぶ……」

【薫子】
「ねぇねぇ冷華さん?
 あっちのはちょぉーっとマトモに会話出来なさそうだし、詳しく事情を教えてもらえる?
 あ、これあたしの新刊なんだけど」
 
【冷華】
「まさか、かの朝比奈先生ご自身からいただけるとは。
 恐縮です。それでは、僭越ながらご説明させていただきます」
 
【薫子】
「やったっ♪」

【冷華】
「事の始まりは38年前。”彼ら”が飛来したことはご存知ですね?」

【睦月】
「あ、あぁ、あのいろんなひとを丸呑みにしていった奴ら」

【冷華】
「その通りです。”彼ら”は突如飛来し、我々研究機関は”彼ら”を排除しようと試みました。
 しかし、結果からいえば”彼ら”の目的は人類に危害を加えるものではなかったのです」
 
【薫子】
「ほへぇ!じゃあ実際の目的はなんだったわけ!?」

【冷華】
「”彼ら”は長い間宇宙を漂い、遥か遠い星からやってきた種族だそうです。
 ”彼ら”は形態変化の力と、高い学習能力、極度に高い生命力を備えており、
 我々と友好的な関係を結ぶことを非常に強く望んでいます」
 
【薫子】
「ほへぇ、それは移民のため?」

【冷華】
「いえ、”彼ら”が言うには『だって相手が喜んでくれたらこっちも嬉しいじゃん』とのことです」

【睦月】
「すっげえ平和……!」

【薫子】
「でもでも、飛来したときはいろんなひとを丸呑みにしていったよね?
 あれはどういうことなのかにゃ?」
 
【冷華】
「”彼ら”は本来テレパシーによる念話が基本となる種族のようで、
 我々人類といち早くコミュニケーションを取るためやむを得ず丸呑みにし、
 母星へと帰って人類の形態と基礎を模倣するためだったそうです」
 
【薫子】
「ほっへーー!!!じゃあ丸呑みにされた人たちは!?」

【冷華】
「”彼ら”の母星で平和で気ままに暮らしているとのことです」

【睦月】
「ま、ま、まじかよ」

【冷華】
「はい。実際に丸呑みにされた我が組織のエージェントとも連絡が取れています」

【睦月】
「うそぉ!?」

【冷華】
「我々の肉体は”彼ら”とほぼ同等のものですから、念話も可能です」

【薫子】
「あたしたちの身体が変わったのって、もしかして?」

【冷華】
「はい。”彼ら”は真咲とのコミュニケーションに応じ、
 友好関係を築くにあたっていくつかの問題を提示すると、
 『じゃあ俺らの姿変えて、そっちの性質変えれば良くね?』との申し出をしてきました」
 
【薫子】
「性質を変える?そんなの、どうやって!?」

【冷華】
「『気合い入れたら一発よ、まじでまじで』だそうです」

【薫子】
「すっげぇーーー!!!」

【睦月】
「めちゃくちゃだ……」

【冷華】
「真咲が難色を示すと、”彼ら”は少し戸惑ったのちに
 『じゃあウチから一人置いていって、あんたらを若干ウチら寄りの性質にしてみるから、なんかあったら言ってよ』と言い、
 パオルを置いて母星へと一時帰還していきました」
 
【冷華】
「その後、パオルへ学習を施すにあたり約3年のうちに962度。
 ”彼ら”を呼び出しましたが、”彼ら”は必ず呼びかけに応じ、
 かつ真摯に対応してくれました」

【睦月】
「なんて律儀な連中なんだ……っ!!!」

【冷華】
「そうして、現代が出来上がり、かつ諸々の問題は”彼ら”の協力によって解決されているのです」

【薫子】
「じゃあじゃあ!じゃあじゃあ!……ん?ちょっと待って、
 他の”彼ら”さんと連絡が取れるなら、
 パオルちゃんってウチに居てもよくない?」
 
【冷華】
「真咲はあの通りめんどくさい人なので素直に帰ってきてと言えないのです。
 そちらの方が、居ますし」

【睦月】
「え、お、俺?」

【薫子】
「あぁ、なるほどね。要は娘を取られた。子離れ前の父親的な感じだ」

【冷華】
「いかにもでございます。
 何分、真咲とワタシでは子が作れないもので」
 
【薫子】
「あら、そういうご関係?」

【冷華】
「”彼ら”に力を借りて、絶賛子作り中です」

【薫子】
「あらぁ♪」

【睦月】
「そういう情報は良いからっ!!!
 結局、あんたらはどうしたいんだよっ!?」

【冷華】
「こちらとしては、別段パオルが帰ってくる必要はありませんので、
 適当に事情をぼかして説明して、無理やり連れ帰る予定でした」
 
【睦月】
「全部話しちゃってんじゃん事情っ!!!」

【冷華】
「口止めはされておりませんので」

【睦月】
「……」

【冷華】
「あと、拗ねた真咲は非常に可愛いので」

【睦月】
「だから聞いてないっつーの!!」

【冷華】
「失礼しました。
 話は変わりますが、こちらとしてもパオルの近況は逐一確認したいのですが、
 よろしいでしょうか」

【薫子】
「あー、まぁなに?パオルが良ければ良いんじゃない?」

【冷華】
「ありがとうございます。それでは交渉させていただきますね」

【真咲】
「だーかーらっ!!!お前はっ!!!ウチの子なのっ!!!」

【パオル】
「だから知らんと言っておるだろうがっ!!!近寄るな気色悪いっ!!!」

【冷華】
「パオル様。どうしても帰っていただくわけにはいきませんか」

【パオル】
「ふんッ!!!断固お断りだッ!!!」

【冷華】
「そうですか、では近所に越してきていただくことは」

【パオル】
「嫌だっ!!!」

【冷華】
「では、たまにお会いしていただくことは」

【パオル】
「む、それなら、まぁ……」

【冷華】
「ありがとうございます。
 睦月様には事情を説明いたしましたので、詳しくはまた今度ということで」
 
【パオル】
「おぉ、お前は話が分かるな。お前だけなら来てもいいぞ」

【冷華】
「ありがとうございます」

【真咲】
「なっ、なぁっ!!!!
 冷華っ!!!お前また勝手に話したなっ!?」
 
【冷華】
「はい」

【真咲】
「むきーーーーーっ!!!!」

 真咲さんは冷華さんに引きずられるようにして玄関から出ていく。

【冷華】
「それでは皆様、お騒がせ致しました。
 今後とも、どうぞよろしくお願いいたします」
 
【パオル】
「うむ」

【薫子】
「また面白い話、聞かせてねんっ♪」

【睦月】
「お、お疲れ様です」

【冷華】
「では」

 ――バタンッ、ブロロロロ。
 
【睦月】
「……な、なんだったんだ」

【薫子】
「さぁ?ま、いいからいいから!
 ほら、イベント行くよイベント!」
 
【パオル】
「睦月、アレから何を聞いたんだ」

【睦月】
「あー……まぁ、いろいろだよ、いろいろ。
 道すがら話すよ」
 
【パオル】
「むぅ、まぁいいか」

【薫子】
「ほらほらっ!急いだ急いだっ!!」

【睦月】
「あーはいはい」

 薫子に急かされ、荷物をリヤカーへと積み込み。

//bg睦月と薫子の家_外観_昼

【パオル】
「おぉ……なかなか快適だなっ!」

 パオルも積み込み。

【睦月】
「ほいでは、いくぞー」

 一歩、踏み出すのだった。

//bg町はずれの道_昼

【薫子】
「おっさきー♪」

【パオル】
「なっ!おい睦月っ!薫子に先を越されるなっ!」

【睦月】
「無茶言うなよ!?」

【薫子】
「へいへーい?遅いぜ遅いぜぇ~???」

【睦月】
「くっそ、このっ……!!!」

【パオル】
「おおおっ、ははっ!いいぞー!行けーっ!!」

//bg青空

 かくして、俺はいつだかの日、一人で歩いていた道を三人で歩いている。

 パオルに関して……まぁ、いろいろ聞いたばかりだったが、
 大したことにはならないだろう。
 
 というか、ちょっとやそっとでどうにかなるような身体はしていないし、
 この世は宇宙人程度で変わるような世ではなくなっているのだ。
 
 ……いや、その宇宙人さんが変えちゃったらしいんだけどもね。
 
 しかし、リヤカーに乗ってはしゃぐパオルを見ればわかる。
 
 あんな出会いから紆余曲折あれど、こうして一緒に歩いている。
 今では、俺の大切な人なのだ。
 
 宇宙人とだって、まぁ、なんか良い感じにやれるさ。
 あの冷華さんたちとも、な。
 
 よって、この世界の平和が揺らぐことはないのだろう。
 
 以前の俺なら、ここらへんで飽きていたかもしれないが、しかし。
 
 今の俺にはパオルが居る。
 
 パオルと一緒なら、この退屈で平和な世界も悪くないかなと思う俺なのだった。
 
 ………………………。
 
 ………………。
 
 ………。

//ブラックアウト

◆エピソード8「

//bg町はずれの道_夜

【睦月】
「いやあ、まさか顔見知りがみんな来るとはなぁ」

【パオル】
「風呂屋のオーナーに、ネカフェの店主、風呂屋で出会ったカップルまでくるとはな。
 しかし、大盛況だったのぅ」
 
【睦月】
「無事全部さばき終えたことだし、いやあこれで今日は枕を高くして寝れそうだ」

【パオル】
「そういえば、薫子が帰ってくるまでどれくらいかかる」

【睦月】
「さぁなぁ……でも2,3日は帰ってこないかもしれないなぁ」

【パオル】
「ほぉん、そうかそうか」

【睦月】
「おう、そうだ……な」

【パオル】
「……で、どうする?」

【睦月】
「………………ごくり」

//ブラックアウト

//cg騎乗位で挿入しているパオル

【パオル】
「ふぁっ、あぁあっ………っ」

【睦月】
「くううっ、ま、まさかこんなにパオルが積極的に求めてくるなんてっ……!」

【パオル】
「し、仕方ないだろうっ!
 こんなに、んんっ、あったかくてっ、きもちよくてっ、とろとろになることっ
 ほしくなってとうぜんだろぉっ」

 言いながら、パオルが激しく腰を前後させる。
 
【睦月】
「く、おおっ!そんなに激しくしたらっ……!!」

【パオル】
「んひぅっ、あっ、ああぁあっ、ごりごりっ、ごりごりってっ」

【パオル】
「あっ、あぁあっっ、んっんっ、あっあっ、だめっ、もっ、ひうぅう―――っっ!!!」

 ―――びくびくっ、びくっ!!びくっ!!!
 
【睦月】
「くうっ、締まる……!」

【パオル】
「ひやあぁっ、あ……い、いっちゃった……んうっ」

【睦月】
「うっ、だ、大丈夫か?」

【パオル】
「はあ……はあ……すぐ、イクとおもわなくて……はふぅ……」

【睦月】
「………っ、な、なぁ」

【パオル】
「ふぁっ……しゅぐっ、するからっ、んっ、んんっっ」

【睦月】
「うおっ、っく、ううっ」

【パオル】
「んっ、あぁあっ、なか、しびれへっ、んうぅっ、あぁあっ」

【パオル】
「はあっ、はぁぁっっ、おちんぽっ、おちんぽいきそうっ?」

【睦月】
「っ、あ、あぁ、きもちいんだが」

【パオル】
「ぴゅっぴゅっ、ぴゅっぴゅっていっぱいでるっ?びゅくびゅくって、できるっ?」

【睦月】
「あ、あぁっ……!いっぱい出すからなっ……!」

【パオル】
「ひあぁあっっ、ずんずんっ、ずんずんきたあっっ、
 んっ、んんっ、いいよおっ、ごりごりしゅごいよおっっ」
 
【睦月】
「くうっ……中が、うねって……!」

【パオル】
「はあっ、んうぅっ、まっ、まだあっっ、まだっ、いかないのっっ
 ひうぅうっ……も、もうっ、またっ……いっちゃうよおっっ……!!」
 
【睦月】
「も、もう、ちょっとだから我慢してくれっ……!」

【パオル】
「ひううっっ……!あっ、あぁっ、がまんっ、んーっ、んんーーっ!!」

【パオル】
「はあっ、ひやあっ、がまんっ、んーーーっっ、はっ、あっ、がまんっ、
 きもちいっ、なかずりずりって、きもちいのっっ、がまんするのきもちいよおっ」
 
【パオル】
「むつきぃっ、ぎゅってっ、ぎゅってしてえっ」

【睦月】
「く、ううっっ……!」

 甘えるように抱き着いてくるパオルの身体をぎゅっと抱きしめる。

【パオル】
「ふぁあっっ、いくっ、いっちゃうよおっっ、むつきにぎゅってされてぇっ、
 ひうぅぅうっっ」
 
 くうう……!抱きしめた瞬間中がぎゅっと締まって……!
 
【睦月】
「お、俺も、イクぞっ」

【パオル】
「ふぁあぁああぁっっ、むつきっ、むつきぃいっっ」

【睦月】
「パオルっ……――!!!」

 ――びゅくっっ!!びゅくんっびゅくんっ!!!!
 
【パオル】
「ふやぁあぁぁぁあぁっっっ……!!!!!!」

 ………………………。
 
 ………………。
 
 ………。
 
//ブラックアウト

//cg添い寝パオル

【パオル】
「んっ、やはりこの中に残ってる感覚はいまだに慣れないな」

【睦月】
「そ、そそ、そういうものか」

【パオル】
「ふふっ、なんだ?恥ずかしいのか?あんなにズンズンと激しく突き上げてきたくせに」

【睦月】
「う、うるせいやいっ」

【パオル】
「ふふっ。しかし、即売会も終わりか。次は何をするか」

【睦月】
「やっぱり車かなぁ。冷華さんも持ってたし……あー、一応持ち主は真咲さんなのかな?」

【パオル】
「む、あの女の話はやめてもらおうか」

 ――ムギュギュッ。

【睦月】
「いたたっ、わ、悪かったって。
 でもやっぱり欲しくないか?
 今回みたいに、薫子も含めて三人で移動ってなると自転車だけじゃあなぁ」
 
【パオル】
「まぁ、そうだが。しかし組み立てるわけにもいかんだろう」

【睦月】
「時間をかければ、いけなくもない、んじゃないか、な?」

【パオル】
「どんだけ自信ないんじゃ……」

【睦月】
「さすがに車の仕組みなんて知らないからなぁ」

【パオル】
「ふふ、いちから勉強してみるか?」

【睦月】
「お、なんだノリ気か?」

【パオル】
「まあな。自転車作りも楽しかったし、今度は車に挑戦してみるのも悪くない」

【睦月】
「よぉし、そんじゃあ明日は町に出てって準備だな」

【パオル】
「また自転車屋のおっちゃんのところに行ってみるか」

【睦月】
「おぉ、何かアドバイスもらえそうだ」

【パオル】
「ふふ……睦月」

【睦月】
「ん?」

【パオル】
「家族になってくれて、ありがとう」

【睦月】
「……俺の方こそ、薫子のことめった刺しにしてくれてありがとう、だ」

【パオル】
「やっ、その言い方はやめろっ!」

【睦月】
「はは、でもホントに。パオルが来てくれて、居てくれて……良かったって思ってるよ」

【パオル】
「っ……そりゃ、どうも……」

【睦月】
「なんだか大変なことを知っちまった気がするけども、まー別に。
 ここにパオルが居て、世の中が平和で~っていうのは変わらないし。
 俺の生活は今までとあんま変わらない」
 
【パオル】
「薫子の手伝いをして」

【睦月】
「気が向いたらなんかして」

【パオル】
「そして寝る、だな」

【睦月】
「あぁ、ただひとつ変わったとすれば……全部パオルと一緒に、ってことくらいか」

【パオル】
「私は……ここに来てからのことしか、覚えていないからな。
 私の全ては、最初から睦月や薫子と一緒のようなものだ」
 
【睦月】
「そっか。ホントはそうじゃないかもしれないのに……パオルの両親、って居るのかな」

【パオル】
「む、そういえば……どうだろうな」

【睦月】
「うちの両親も元気らしいし、そのうち冷華さんに聞いてみるかー」

【パオル】
「むむ、車が先だぞっ。こっちが先だからなっ」

【睦月】
「わかってるわかってる」

【パオル】
「ならよしっ。
 ふぁあ~……んにゅ……未だにこの、唐突に眠いような気がしてくる感覚には慣れんな……」

【睦月】
「まぁ、パオルはまだまだ生まれたてみたいなもんだしな。
 よし、とりあえず寝るか」
 
【パオル】
「あぁ……明日は、まず町に……」

【睦月】
「あぁ、町に行って、それから――」

【パオル】
「すぅ……すぅ……」

【睦月】
「……おやすみ、パオル」

【パオル】
「んん……むつき……」

【睦月】
「これからも、よろしくな」

 俺はそっと、パオルを撫でながら。

【パオル】
「すぅ……えへ………♪」

 その幸せそうな寝顔に、どうしようもない愛おしさを感じながら。
 
 明日の、これから先の、退屈で平和で幸せな世界を思い描くのだった。

 ………………………。
 
 ………………。
 
 ………。
 
//ブラックアウト

//END
 

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